高原とは、標高の高い場所に広がる起伏の少ない台地のこと。関東近郊でいうと、那須や日光・尾瀬、志賀、浅間山周辺、八ヶ岳周辺、信越、南北・中央アルプス周辺、富士山周辺などがあげられる。
春から初夏には高山植物の群生、夏には爽やかで涼しい気候、秋には色とりどりの紅葉、そして冬にはウィンタースポーツと、高原は四季折々の山を楽しむのにうってつけ。なにより、高原道路やロープウェイ、ホテル、レストランなど観光地としての施設が充実している場所が多いため、気軽に山のリゾートを楽しめるのが嬉しい。なかでも、澄んだ空気と美しい景色を味わいながらの高原ハイキングは、登山よりも手軽に楽しめると、初心者やファミリーにもおすすめだ。
そこで、関東近郊の長野・群馬・栃木エリアの中から、ハイキングにおすすめの高原を6つピックアップする。高層湿原や高山植物群、開放的な展望など、それぞれ山の醍醐味が満載。あわせて、周辺の山や観光スポットも紹介するので、ハイキングのプランニングの参考にしてほしい。
諏訪湖の北東部、八ヶ岳中信高原国定公園の一角に位置する霧ヶ峰高原。広さは東西10km×南北15kmに渡り、緩やかな起伏が続く標高約1600mの火山台地だ。山全体は草原に覆われ、日本百名山の車山(標高1925m)を最高点とする。
春から夏にはレンゲツツジやニッコウキスゲが群生し、シーズンにはカメラを手にした多くのハイカーや観光客が訪れる。さらに、1939年に国の天然記念物に指定された車山湿原・八島ヶ原湿原・踊場湿原でも、年間を通して400種以上の亜高山植物を観察することができる。そして、高原を囲む車山・蝶々深山・鷲ヶ峰のピークからは、富士山や八ヶ岳、南・中央・北アルプスなどの名峰を360°見渡せる。また、霧ヶ峰高原の緩やかな起伏は絶好の上昇気流を生むことから、日本のグライダー発祥地としても知られ、青空を風に乗って飛ぶグライダーの姿も見られる。
花の季節だけでなく、草紅葉の秋、霧氷の晩秋など四季の様相も美しい。ちなみに、その名の通り、霧が発生しやすいために濃霧の日にはハイカーに方向を知らせる鐘が鳴る。この霧鐘塔は関東富士見百景に選定されている。
コースは、車山肩バス停から車山、蝶々深山、物見岩、八島ヶ原湿原を経て車山肩に戻る周回ルートが一般的だ。
高低図
霧ヶ峰高原と同じく八ヶ岳中信高原国定公園に属する美ヶ原高原。最高地点の標高2034mの王ヶ頭をはじめ、2008mの王ヶ鼻、1990mの牛伏山、1977mの鹿伏山、1973mの武石峰などのピークに囲まれた約2000mの火山台地で、百名山に数えられる。高原の大部分は牧草地で、牛や馬が放牧されるのどかな景色の中、整備された道が続く。
もっとも人気のあるルートは、王ヶ鼻から王ヶ頭、山本小屋、美ヶ原美術館までのアルプス展望コースで、八ヶ岳や富士山、南アルプス、中央アルプス、乗鞍、北アルプスの山々といった大パノラマを望む。ちなみにここで紹介するのは、王ヶ鼻の北東にある武石峠方面からスタートするコース。さらに周辺にも足を延ばすなら、標高2006mの茶臼山からアルプス展望コースを進むコースや、霧ヶ峰まで縦走する約23kmのコース、美ヶ原ロングトレイルと呼ばれる総距離約45kmのコースなどもある。
美ヶ原のハイキングは、新緑の春、高山植物が咲く夏、紅葉の秋、雪原を歩く冬と、季節ごとに違った山の景色を楽しめる。気軽な散策が可能だが、標高は高いので日焼けや装備には注意したい。登山後は牧場や美術館、温泉も訪れてみたい。
高低図
ハイキングやスキーなどアウトドアクティビティが盛んな日本有数の観光レクリエーション地、志賀高原。その中心にある志賀山や大沼池、四十八池を含むエリアはユネスコエコパークに登録され、エコツーリズムも近年盛んに行なわれている。
志賀山は度重なる火山の活動によってできた山で、珍しい地形や地質をもつ。そのため、湖沼、湿原、原生林など志賀高原ならではの複雑で変化に富んだ山の風景が見られ、高山植物も多く花の百名山にも選ばれている。とくに、大小多くの池塘が点在する四十八池は、初夏にはワタスゲやヒメシャクナゲの花が咲き、一見の価値がある。
おすすめのコースは、木戸池温泉バス停をスタートし、ひょうたん池、渋池を巡りながら、標高2036mの志賀山、鬼の相撲場池、標高2037mの奥志賀山、四十八池、大沼池と進み、大沼池バス停にゴールする4時間半ほどのルート。木道を歩きながら、横手山や赤石山などの志賀高原の山々や湖沼を展望するハイキングは景色に飽きることがない。ハイキングの適期は、新緑から夏にかけての花の時期と紅葉の秋。6月上旬までは残雪がある。
なお、時間と体力があれば、赤石山や横手山へ縦走するのもおすすめだ。ちなみに、横手山の山頂にある横手山頂ヒュッテでは、ボルシチやシチューパン、雲の上のパン屋さんのパンが人気だ。
高低図
別名「花高原」とも呼ばれ、高山植物の宝庫として知られる湯ノ丸高原。長野と群馬にまたがり、浅間連峰の西側に位置するスキーや観光で人気の高原だ。ここで紹介する湯ノ丸山以外にも、烏帽子岳、東篭ノ登山、西篭ノ登山、水ノ搭山など、山歩きにおすすめの山はいくつもある。
なかでも、お椀を伏せたような丸い山容が特徴の湯ノ丸山は、その名もツツジ平と呼ばれる、6月中旬から咲き始めるレンゲツツジの群生地として知られ、シーズンにはたくさんのハイカーや観光客が訪れる。さらに、展望の良さも折り紙付きで、標高2101mの山頂からは、目の前に烏帽子岳、そして浅間山や四阿山、北アルプスを一望する。
コースは、地蔵峠から入り、湯ノ丸山とは対照的な尖った山容の烏帽子岳、湯ノ丸山へと進む周回ルートが一般的だ。他にも、旧鹿沢温泉から角間峠を経て湯ノ丸山、烏帽子岳と周回するルートも取れる。
適期は5月中旬から10月までだが、冬には霧氷やスノーシューなどを楽しむハイカーも多い。
高低図
日本百名山の武尊山や鹿俣山の裾野、標高1200〜1500m付近に広がる玉原高原。スキー場やラベンダー畑などでも人気のリゾート地だ。高原内にある玉原湿原は、ミズバショウをはじめトキソウ、コバイケイソウ、ツルコケモモ、ヤマトリカブトなど数十種類の高山植物が自生することから「小尾瀬」とも呼ばれ、木道散策が楽しい。また、関東有数といわれるブナの原生林も美しく、とくに巨木が立ち並ぶブナ平は、夏には緑、秋には紅葉に彩られる。
そんな玉原高原とともに訪れたいのが鹿俣山だ。山頂でも標高1637mと標高差が少なく、多くのルートが整備されているので初心者やファミリーにもぴったり。登山道からは谷川岳、山頂からは赤城山や榛名湖、そして眼下に玉原湖を望む。ここでは玉原センターハウスから玉原湿原、鹿俣山を行く周回コースを紹介する。
適期は花や紅葉を楽しむ季節だが、冬はスノーシューを楽しめる。また、玉原高原の麓ではサクランボやブルーベリー、ブドウ、リンゴなどのフルーツ狩りも盛んなので、ハイキングとあわせて訪れてみたい。
高低図
日光市の赤薙山の斜面に広がる、標高約1200mの霧降高原。赤薙山への登山道にもなっているキスゲ平は、約26万株のニッコウキスゲの大群生地として知られ、他にカタクリやアカヤシオ、シロヤシオ、ヤマツツジなどの高山植物が4月中旬から7月中旬咲く、高山植物の宝庫だ。
キスゲ平までは、霧降高原レストハウスから空に伸びるように続く1445段の天空回廊を上り、周辺の山々を望む小丸山展望台へ。花と眺望を楽しんだ後は、そこから丸山分岐を直進し、赤薙山へ進もう。赤薙山は日光三山の一つである女峰山に隣り合う、かつての修験道の山。三等三角点のある山頂には赤薙山神社が祀られている。
余裕があれば、そこからさらに赤薙山神社奥社跡を過ぎ、パノラマ展望が楽しめる一里ヶ曽根独標を越え、女峰山へと縦走するのもおすすめ。ファミリーなら、下山後に霧降高原にある牧場で高原グルメや動物とのふれあいを楽しむのもいい。
高低図