阿智村で山のぼり

夏の富士見台高原
夏の富士見台高原
登山靴
初秋の大川入山
秋の蛇峠山
冬の富士見台高原
冬の富士見台高原

企画・構成=山と溪谷オンライン 執筆=横尾絢子 イラスト=tent デザイン=yucca Sponsored contents 2023.06.02

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春の新緑と南アルプスを望む絶景、
五平餅を満喫!

May.
11

「日本一の星空」で有名な長野県の南部にある阿智村。そのほぼ中央にあるのが網掛山(あみかけやま)です。えっ! 網掛山を知らないって? 網掛山は阿智村を代表する7つの山々「阿智セブンサミット」の中でも、一番標高が低い山です。しかし、手軽に山を楽しむにはちょうどで、なにより地元の方々に愛されているのがいいところ。登山道の一部は旧街道にもなっており、歴史を肌で感じることができます。そんな網掛山で、新緑が美しい5月11日に、阿智☆昼神観光局が主催するハイキングイベントが開催。その様子をレポートしましょう。

新緑の網掛山をハイキング

阿智☆昼神観光局が主催するハイキングイベントは今回で8回目。毎回参加しているという方を筆頭に、リピーターが多い人気イベントです。参加者は、場所柄、中京圏の方が多いのですが、今回は神奈川県からご夫婦が初参加。8名の参加者でイベントが開催されました。

登山ガイドは、地元出身の伊藤賢治さん。阿智☆昼神観光局が主催するハイキングイベントでは、おなじみのガイドさんです。参加した常連さんとは顔なじみということもあり、和やかな雰囲気で行われました。

阿智セブンサミットの一座・網掛山
ガイドの伊藤さん(右)と観光局の酒井優佳さん
行動食には地元企業の南信州菓子工房のドライフルーツが用意されていました

ハイキングの舞台となった網掛山(1133m)は、ほかの阿智セブンサミットのように日本百名山、信州百名山には選ばれていませんが、歩きやすい登山道が整備されており、比較的楽に登れるのが特徴です。「網掛山は、登り始めからの標高差が少ない山なので、初心者の方でも登りやすい山だと思います。新色の季節は緑が濃く、山頂部分には紅葉樹が多いので秋は紅葉がきれいです。山頂部の傾斜がなだらかで、飯田市の方から見ると台形に見える形が特徴的で、地元の人からも親しまれている山ですね」(伊藤さん)

山の北側にある昼神温泉からの登山道も整備されていますが、大平神社付近の中平から登るのが一般的なルートで、登山道は網掛山の山頂を通る周回コースになっています(2時間20分〜30分)。右周りでも左周りでも歩くことができますが、左周りの方が登りの斜度が緩く、普段は山に縁がない人でも楽しめるので山初心者にもおすすめ。今回は左まわりのコースを歩きます。

当日は、8時30分にスタート地点の中平近くの阿智村智里東公民館に集合。自己紹介の後、皆で準備運動をして、ジャンボタクシーでコースの起点となる中平へ向かいます。

今回のコース、実は歴史ファンをワクワクさせる特徴があります。それは中平から網掛峠のコースの一部が東山道という古道になっていることです。中山道が整備される前の古代から中世に、近江から東北を結ぶ重要な道として使われていました。坂上田村麻呂も奥州遠征の際に通ったといわれています。

登山コースには古代東山道だったことを示す道標が
古代の人も歩いた道をたどって
新緑がまぶしい季節。緑の美しさに目を奪われ、きつい登りもつらくない!?

まずは、「古代東山道祭祀遺跡碑」が立つ地点で、伊藤ガイドの説明を聞いてからスタート。所々に東山道の道標があり、「街道」の雰囲気をそのまま残している広い道幅が、往時の繁栄を物語っています。網掛峠の手前で斜度が少しきつくなりますが、短い距離なのでゆっくり登れば大丈夫。つづら折りの道を登り切ると峠に到着です。かつては難所であったこの峠を先人たちが通ったかと思うと、感慨深いものがあります。

網掛峠から網掛山山頂へは、尾根沿いの緩やかな道を上がっていき、およそ30分で到着。山頂は展望がないので、すぐに景色のいい展望台へ。アップダウンの少ない歩きやすい尾根筋を進むと10分ほどで到着です。

展望台は東向きの斜面に建てられ、南アルプスの山々を一望。好天に恵まれたこの日は、すばらしい大パノラマの景色を堪能しました。

展望台は少し狭いのですが、ベンチが設置されているので理想的な休憩スポット。参加者は飲み物を飲んだり、軽く食事したり、南アルプスの大パノラマを眺めながら、贅沢なひとときを過ごしました。

網掛山山頂でパチリ。展望はなくても、新緑がきれいです
一帯は古代からの歴史をもつ地域。古代文字「ヲシテ文字」による「アミカケヤマ」の標柱が建てられていた
展望台では南アルプスの山々を眺めながら休憩。標高の低い網掛山でも、こんなすばらしい景色が堪能できます
「おひとつどうぞ!」軽食のおすそわけも楽しい
休憩スポットは森の中
ご飯粒ついてましたか?

展望台からの周回コースの後半部分は、ところどころにつづら折りの道のある急な下りが続きます。気を抜くことができない下りですが、所々に赤いツツジの花が登山道を彩り、参加者の心を和ませてくれます。

45分ほどで里まで降りてきたところでごほうびが。山の麓でも標高が700mほどあるので、展望が広けた場所では南アルプスの峰々を望むことができます。かつて、W ウエストンが眺めた景色が、下山後の参加者をねぎらっているようでした。

下山コースで多く見られた鮮やかなヤマツツジ
思わぬところで展望が

今回のイベントは、これで終わりではありません。本日のメインイベントとも言うべき「五平餅づくり」が、下山後の参加者を待っていました。

向かった先は、古民家「つぼや」。朝の集合場所だった阿智村智里東公民館から車で約4分の場所にある、昭和初期に建てられた町家造りの古民家を利用した施設です。地元の情報を発信したり、地域ガイドやさまざまなイベントを行なっています。今回は、この「つぼや」で五平餅づくりを体験しました。

昭和初期の古民家「つぼや」。建物の中は無料で見学できます

五平餅とは、長野県伊那地方などに伝わる郷土料理。炊いたうるち米を潰して串焼きにしたもので、地域ごとに、形やタレが異なります。

「つぼや」の五平餅は、阿智村の家庭で代々受け継がれてきた伝統的なレシピを用いたもの。ワラジ型で、タレにはくるみと醤油を使います。

南信州といえば「五平餅」。コゲ目をつけずに焼くのがコツだとか。これは焼きすぎ

五平餅づくりを体験は、古民家のレンタルスペースでもある1階の8畳+6畳の和室で開催。4人ずつの2グループに分かれて 1.タレ作り 2.炭火起こし 3.お米をつぶす 4.つぶしたお米を型にはめて串をつける 5.炭火で両面焼く 6.タレをつけて焼くと出来上がり の各工程を体験しました。

たれに入れるくるみをすり潰します
作業はみんなで交代しながら
丁寧にごはんを潰します
ワラジ型に成形します
屋外で炭火焼き。いい香りがしてきます

すりこぎで、くるみやお米をつぶす作業が慣れていない人もいましたが、皆で協力して無事に完成。食べてみると、これまでの五平餅の常識を覆す“もちふわ”の食感が特徴で、とても美味。五平餅を焼いた「つぼや」の川沿いの裏庭で、先ほど登った網掛山を望みながら、先人たちから受け継がれてきた地域の味を皆で堪能しました。

ついにできあがりました!
焼きたてですよ〜
神奈川から参加のご夫婦。自分で作るとひと味違いますね

これで今回のイベントは無事に終了です。

イベントを企画した阿智☆昼神観光局の酒井優佳さんは「阿智村のイベントは山の初心者をターゲットにしているので、これから山を楽しみたい方に参加していただけるとうれしいですね」と話してくれました。参加者は皆満足した様子でイベントは大成功。次回のイベントはなにか、期待してしまいます。

「阿智村の山は百名山の恵那山から網掛山のように地元の方からも親しまれている里山まであり、いろいろなレベルの山登りが楽しめます。また、季節によっても、山のいろいろな顔があり、何回でも楽しめるのが阿智村のイベントのいいところ。山だけでなく地域の独特の文化を体験でき、山好きの仲間と盛り上がって楽しめます。イベントを通して、南信州の山を知ってもらう良いきっかけにもなるので、これからも色々なイベントを開催していきたいと思います」(酒井さん)

魅力的なイベントを開催している阿智☆昼神観光局。これから山を楽しみたいと思っている方は、チェックしてみましょう。

(文・写真=辻野 聡)

今回のイベントの参加者。後列右から2人目が登山ガイドの伊藤さん。前列右端が阿智☆昼神観光局の酒井さん「阿智村の山は楽しいですよ〜」