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クマにも遭遇 黒部源流域の稜線 黒部五郎・三俣蓮華・双六(8C)

黒部五郎岳 三俣蓮華岳 双六岳( 北アルプス・御嶽山)

パーティ: 1人 (すてぱん さん )

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行程・コース

天候

1日目:曇り 風もなく蒸し暑し
2日目:霧のち晴れ
3日目:晴れのち霧
4日目:晴れ

利用した登山口

折立   新穂高温泉  

登山口へのアクセス

バス
その他: (往路)まいたび登山バス 新宿発折立登山口行きバス 新宿都庁大型バス駐車場 23:00発 折立 翌朝6:40到着

(復路)まいたび登山バス 新穂高温泉14:00発 上高地経由 新宿駅西口20:20着

この登山記録の行程

【1日目】
折立(06:55)・・・(三角点手前で熊渋滞10分ほど)・・・三角点(08:24)[休憩 6分]・・・五光岩ベンチ(09:49)[休憩 10分]・・・太郎平小屋(10:34)

【2日目】
太郎平小屋(05:20)・・・北ノ俣岳(上ノ岳)(07:04)[休憩 10分]・・・中俣乗越(08:33)[休憩 5分]・・・黒部五郎ノ肩(10:17)[休憩 8分]・・・黒部五郎岳(中ノ俣岳)(10:35)[休憩 5分]・・・黒部五郎ノ肩(10:50)[休憩 3分]・・・(カール内で昼食休憩30分)・・・黒部五郎小舎(13:05)

【3日目】
黒部五郎小舎(05:26)・・・巻道合流点(06:47)[休憩 8分]・・・三俣蓮華岳(07:29)[休憩 11分]・・・双六岳(08:56)[休憩 12分]・・・双六小屋(09:58)[休憩 24分]・・・弓折乗越(11:33)[休憩 10分]・・・鏡平山荘(12:17)

【4日目】
鏡平山荘(06:40)・・・シシウドが原(07:18)・・・秩父沢出合(08:15)・・・小池新道登山口(08:56)・・・わさび平小屋(09:12)[休憩 5分]・・・笠新道登山口(09:28)・・・新穂高温泉(10:15)

コース

総距離
約37.2km
累積標高差
上り約3,075m
下り約3,341m
コースタイム
標準20時間40
自己19時間53
倍率0.96

高低図

標準タイム比較グラフ

GPX ダウンロード KML ダウンロード

登山記録

行動記録・感想・メモ

東京からアプローチしやすい信州側から登る機会が多かった北アルプス。今回は折立から黒部川源流域の山々を巡ってきました。そのたおやかな稜線と間に広がる静かな草原は、V字に深く削られた黒部下廊下の垂壁に穿たれた道を歩いたものからすると、驚くべき対照でした。

北アルプスの縦走も3年ぶり。落ちた体力と感覚が不安ではありました。また、コロナ後の小屋泊の縦走登山は仕事の都合、天候に加え小屋の予約と条件が揃わなければならなくなりました。北アルプスの主な稜線を全て歩いてみたいと思いながらも、今シーズンもウジウジ考えていたのですが、山の日の連休前なら小屋の予約が出来そうで思い切って出かけることにしました。途中クマに出会したり、ウォーターリザーバーが破れたりハプニングもありましたが、予報よりも好天に恵まれ、なんとか歩き通すことができました。特に折立から黒部五郎岳あたりまでは、登山者の数も少なく静かで、V字に深く切れ込んだ下ノ廊下と対照的なたおやかな稜線と池塘が散在する草原に咲く花、黒部五郎の大岩壁とカール、三又蓮華や双六からの大展望、鏡池からの槍穂高など盛りだくさんの魅力的コースでした。
コロナ後に登山機会が減ってしまい体力に不安を感じていたところ、なんとか歩き通すことができ、少し自信がつきました。

(1日目)折立登山口ー太郎平小屋
登山口に着くまでは、体力低下と低く垂れ込めた曇天に不安を抱えていました。予定通り登山口に到着したバスを降り、入念にストレッチ。かつての感覚で登ったらオーバーヒートすると考え、ゆっくり着実なペースを心がけ、太郎坂を登ります。これまで登りでは大抵先行パーティーを抜くことが多かった私ですが、今回は抜きつ抜かれつというペース。意図してゆっくり歩いているのですから、これでいいのです。最初の30分で標高300mを稼いだことを確認して、これならなんとかなるかなと感触を掴みました。朝から蒸し暑く風もない登りに、体からは滝のような汗が流れますが、それでも久しぶりの北アルプスを登る喜びに気分は高揚してきて、あたりから聞こえる鶯の鳴き声に励まされて、一歩、一歩上ります。

三角点が近づいたところで先行者が立ち止まっており、この先の登山道上に熊がいると伝えられました。後ろがつかえたちまち渋滞。熊鈴や大声、ホイッスルにも全く動じずにマイペースで笹などを齧っている様子。どうやらツキノワグマの子供のようです。結局、藪の中に姿を消すまでの10分ほど待機を強いられました。

その後は蒸し暑さに苦しみながらも順調に高度を稼ぎ、太郎平小屋に到着。周囲はガスが湧き立っていて、眼前に聳えているはずの薬師岳や黒部五郎岳の姿も隠れていますが、ともあれ無事に登れたことに安堵しながら昼食。5時の夕食まで時間がたっぷりあったので、薬師峠まで散策しました。この山域は、広々たおやかな稜線の草原に池塘が散在し、登山者の姿もまばらで静か。北アルプスの他の山域とは違う雰囲気に魅力を感じました。

高気圧が緩やかに張り出し、天候に大きな崩れはないものの、昼前から稜線上は霧、午後はにわか雨の可能性との天気予報。早出早着きの鉄則が肝要なのですが、受付時に朝食が5時からと聞いてまあいいかと思ってしまいました。後で出発時刻を早めようと朝食を弁当に変えられないかと尋ねたのですが、断られてしまいました。この辺りは感覚が鈍ってしまっているのでしょう。さらに、ザックに収納してチューブで吸水できるウォーターサーバーの接合部が剥離するトラブル。あわててペットボトルを購入して水筒替りとすることにしました。営業小屋がなければ、この時点で試合終了となりかねない致命的トラブルでした。コロナ以降の完全予約制は、行動の自由を制約しますが、スペースが十分に確保され大混雑もなく快適でした。夜は満天の星を楽しみ、ストレッチを入念にして、明日に備えます。

(2日目)太郎平小屋ー北ノ俣岳ー黒部五郎岳ー黒部五郎小舎
今日は7時間超の長丁場。朝食を済ませてすぐに出発します。前後に登山者を見かけることもなく、朝靄の太郎平を爽やかな気分で進みます。北ノ俣岳までのたおやかな稜線を進むとガスが切れて快晴。黒部五郎岳に向かう道もなんら危険はありませんが、途中の赤木岳のピーク付近は短いながらも岩場でポールはしまったほうがいいでしょう。私はこれを怠ったので少しヒヤヒヤしました。ペンキ印も擦れているので、進路を見定めて。黒部五郎の山頂からは360度の絶景ですが、早くも周囲に雲が沸いています。県警のヘリがパトロールでしょうか上空に飛来し、目の前で旋回していきました。動画でご紹介できないのが残念。

今回のコースは危険箇所はほとんどないのですが、前述の赤木岳、黒部五郎からカールにジグザグに下降するガレ場の急斜面には注意です。山頂から見下ろした時には天国のように見えたカールの底面も歩きにくかったです。しかし、カールから見上げる黒部五郎の切り立った柱状節理の岩壁はまさに絶景。適当な岩の上に上がって弁当を広げ、心ゆくまで楽しみます。この間も登山者が少なく、この雄大な景色を静かに楽しめるのはこの山域の特色でしょうか。樹林帯に入っても足元は累々たる岩で歩きにくいです。黒部五郎と明日登る三俣蓮華はほぼ同じ標高なのに、こんなに降るのかといささか不安になりながらも、五郎平の広やかな草原が見えたら黒部五郎小舎まで後少しです。ここでは夕食においしいトンカツが出てびっくり。最近建て替えたのか、屋内もトイレもとても綺麗でした。コロナ以降、山小屋の料金は大きく上がりましたが、高いけれども良いサービスというのは一つのあり方なのでしょう。

(3日目)黒部五郎小舎ー三俣蓮華岳ー双六岳ー鏡平山荘
今朝は朝から快晴。朝の涼しい時間帯に三俣蓮華まで登り返します。標高を稼ぐにつれて昨日登った黒部五郎、薬師岳から太郎平を経てこれまで歩いてきた伸びやかな稜線が視界に広がります。さらに雲海から突き出た飛騨の名峰笠ヶ岳。視界が開けた先に朝露に輝くチングルマの群落が広がっていたのには感激しました。

三俣蓮華に立つとさらに槍穂高も含めた360度の大展望。伸びやかな稜線は、体力が許す限りいつまでも歩いていたくなります。双六からはお馴染みの西鎌尾根から突き上げる槍ヶ岳の姿。天空の滑走路と言われてしまえば、もはやそうとしか見えなくなってしまいますね。双六小屋に下り弁当ので昼食、山麓から湧き上がってきたガスの合間から鏡池山荘が見えました。小屋に到着したところで小雨がぱらつき始めましたが、すぐに止みました。ここも綺麗な小屋で、若い女性にも喜ばれるのではないでしょうか。鏡池からの絶景はガスに阻まれ、明日のお楽しみです。

(4日目)鏡平山荘ー新穂高温泉
最終日も朝から快晴。鏡池からは槍穂高連峰の西面を見るので、朝はシルエットになりますが、存分に景色を楽しんでから新穂高温泉に向け出発です。弓折岳の立派な姿を見上げながら、昨日ちょっと足を伸ばしておくべきだったかなあと、当初の不安を棚に上げて欲も出てきます。時間の経過と高度が下がるにつれて体が暑く、汗もかきます。新穂高温泉でお湯に浸かることを楽しみに、途中秩父沢などの冷たい水で顔を洗ったりしながら下ります。見上げる抜戸岳の切り立った岩壁のなんと魅力的なことか。わさび平小屋、笠新道登山口を通過しながら、左俣林道を実際の実際の距離よりも気分的に長く感じながら新穂高ロープウェイ駅まで歩きゴール。中崎山荘で温泉にゆっくり浸かりながら、帰りのバスを待ちました。

当初の不安も、トラブルもありましたが、歩いてみればなんとかなって少し自信になりました。さて、次はどこに登ろうかな。


コース定数78 岐阜県山のグレーディングC

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フォトギャラリー:116枚

新宿からまいたびの夜行バスで折立登山口に6:40に到着

太郎坂の三角点手前。前方に熊がいて10分ほど渋滞。ツキノワグマの子供らしい。ホイッスルなどで大きな音を出しても全く動じない。結局笹藪の中に姿を消したのを見計らって、みんなで派手に音を出しながら前進。
太郎平小屋に取材に来ていたローカル局のスタッフに請われて動画を提供したけど、その後使われたのかしら?

太郎平小屋が見えてきた

あいにくガスがかかって黒部五郎岳も薬師岳も隠れている

太郎平小屋に10:34に到着。今日の行動はここまで。暇なので薬師峠まで散策 登山者も少なく静かだ

小屋に戻ります

夕刻、ようやく見え始めた薬師岳

黒部五郎の姿も

天の川

2日目、朝靄の中を黒部五郎小舎を目指して出発

なだらかな太郎平は前後に登山者の姿もなく、静かそのもの
マーラーの第一交響楽第一楽章が自然に流れる

チングルマ

北ノ俣岳へのたおやかな稜線 誰もいない あたりは静寂

彼方に槍ヶ岳

加賀白山

薬師岳の左の肩に剱岳

左から笠ヶ岳、乗鞍岳、御嶽山

黒部五郎岳への稜線
このたおやかさは、V字に深く削られた黒部下廊下の垂壁に穿たれた道を歩いたものからすると、驚くべき対照だ。左奥に槍ヶ岳。右奥は笠ヶ岳

赤木岳 ここから見るとなんていうことのないピークだが山頂付近は岩場で、ペンキ印を見落とさないようやや左側に巻く

赤木岳を振り返る

赤木岳から中俣乗越を経て黒部五郎岳へ登り返す

トウヤクリンドウ

黒部五郎への登り返し

薬師岳

黒部五郎の肩から山頂へザックを置いてピストン

山頂からカールを覗き込む

ヘリがパトロールのためか飛来 遠景は水晶岳

カールへ下降

黒部五郎岳

カールへの下り道は、累々と岩が転がっていて歩きにくい

北面の岩が絶景

カールから見上げる黒部五郎

カールの絶景を前に、太郎平小屋で用意してもらった竹の皮に包まれた五目寿司をいただき30分ほど大休止

カールには巨岩が累々と横たわっている

雷岩

樹林帯入っても足元は累々たる岩で歩きにくい

本日のお宿、黒部五郎小舎

黒部五郎小屋から抜戸岳

今夜も満天の星

3日目の朝は快晴。昨日から気になってしょうがない抜戸岳の垂壁

三俣蓮華岳への登り返しでスタート

黒部五郎岳は北西から見るよりも東側から見た方が特徴的

あそこを登ったのだなと満足しながら振り返る

笠ヶ岳

樹林帯の上りを抜けると、朝露に輝くチングルマ

左から雲の平、祖父岳、ワリモ岳、鷲羽岳

三俣蓮華への登り

雲の平にも行ってみたい

三俣蓮華岳山頂 360度の大展望

山頂からの大展望 槍穂高

右に水晶岳 今回の山行で水晶岳の姿は終始際立っていた

大展望を楽しみながら双六岳への稜線を歩む

ハクサンフウロ

双六岳山頂から槍ヶ岳 天空の滑走路とはよく名づけたもので、もうそうとしか思えなくなってしまう

双六岳山頂からの展望 右から鷲羽岳、水晶岳、三俣蓮華岳、薬師岳

同じく笠ヶ岳

同じく右から薬師岳、太郎平小屋を挟んで、北ノ俣岳、黒部五郎岳 今回歩いてきた稜線が一望できる

双六岳から槍ヶ岳

双六小屋

ピーク間に広がるなだらかな草原も魅力的

コバイケイソウ

トリカブト

本来なら槍穂高の峰々が見えるはずだが、やはり時間と共にガスが湧いてくる

眼下に最後の宿泊地、鏡平山荘が見えてくる

弓折乗越から鏡平へ降る

鏡池の夕景

今日も満天の星

鏡池から槍ヶ岳

鏡池から朝日が差し込む槍穂高

最終日の朝も快晴

小池新道を新穂高に向けて下る

カラマツソウ

シシウドが原から望む穂高の稜線

シシウドが原から望む焼岳、乗鞍岳

沢の水で顔を洗い、涼を取る

槍ヶ岳を見上げる

小池新道入り口

林道の木陰は涼しい

わさび平小屋脇の流れ

林道の木陰は涼しい

左俣林道から見上げる抜戸岳

林道脇のゴスワラから時折噴き出す風が涼しい

新穂高ロープウェイ駅に到着

温泉を楽しみながら帰りのバスを待ちます

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装備・携行品

みんなのコメント

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  • はじめまして。
    8/7〜8/10、すてぱんさんと同じ日程でわさび平小屋〜双六小屋〜鷲羽岳〜双六小屋〜新穂高ロープウェイ駅を歩いた者です。
    三俣蓮華岳から黒部五郎岳を見て、今度はあちらまで歩きたいな、と思っていましたところ、すてぱんさんの記事を拝見いたしまして、思わずコメントさせていただきました。
    実は折立から薬師岳に行くことを一旦考えたのですが、知り合いが昨年折立でバスを降りたところで熊に遭遇、ガイドさんが適切に対応して事なきを得た話を聞き、今回はコースを変えた次第でした。さんの記事を拝見しやはりあの辺りは熊がいるのかしら、と感じました。
    8/10の14時新穂高ロープウェイ駅発のまいたびバスに、私も乗っていたので(3列シート車)、もしや同じバスにいらしたかと、思ってしまいました。
    今度はすてぱんさんが今回歩かれたコースを歩いてみたいと思いました。
    突然のコメント、失礼いたしました。

  • manimaさん はじめまして
    また、丁重なコメント、ありがとうございます!

    折立周辺でクマと遭遇したという話は、私もいくつか耳にしましたから、決して珍しいわけではないのでしょうね。幸い、私の場合は、遭難対策協議会のかたとか、環境省のレンジャーさんも含め周囲に大勢の方々がいましたので、怯えたり、撤退を考えるようなことはなく、談笑が聞かれるなど終始リラックスしていました。ただ、これが人の姿も稀な状況でたった一人で対峙していたとしたら、同じようには振る舞えなかったと思います。
    帰りのバス、私は4列シートの方だったんですが、集合や休憩の時にすれ違っていたかもしれませんね。
    レコにも書きましたが、たおやかな稜線は静かでうっとりするような美しさでしたし、黒部五郎岳のカールの底から見上げる岩場も絶景、とても魅力的でしたのでぜひ歩かれたらと思います。

登った山

三俣蓮華岳

三俣蓮華岳

2,841m

北ノ俣岳

北ノ俣岳

2,662m

黒部五郎岳

黒部五郎岳

2,840m

双六岳

双六岳

2,860m

弓折岳

弓折岳

2,592m

太郎山

太郎山

2,373m

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