突然の鉄砲水で流されてしまう|子どもとの外遊びで気をつけたいことを死亡事例から紹介③

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夏に向けて、子どもと一緒に登山や、川遊び、海水浴などに出かける人も多いのではないでしょうか。しかしながら、子どもの外遊び中の事故はあとを絶ちません。今回は、子どもと一緒に外遊びに行く際に気をつけたい事例と、どうやったらそれを避けられるかの解説を『子ども版 これで死ぬ 外遊びで子どもが危険にあわないための安全の話』(山と溪谷社)から紹介します。

文=大武美緒子、イラスト=コルシカ

【事例】鉄砲水に流される

7月下旬、愛媛県の山間部にある宿泊・自然体験施設にお泊り保育で訪れていた幼稚園の園児31人(5〜6歳)と引率の保育者8人が、施設近くの加茂川で川遊びをしていました。午後3時半ごろ、鉄砲水が発生。急な増水で園児3人と引率していた職員1人が流され、そのうちの1人、5歳の男の子の行方がわからなくなりました。男の子は、約200m下流で発見されましたが死亡しました。園児、引率者はライフジャケットを着用しておらず、避難や救助のためのロープや浮き具などの準備はされていませんでした。

この地域では梅雨前線の影響で、事故前日までの9日間、付近の降水量の合計は73mm(※)、雨が降らなかったのは1日のみでした。当日は未明から朝方、ところによりカミナリをともなう激しい雨が降る予報が出ていました。事故の起こった場所は山間を流れる中流域で、事故当日の朝までに周囲の山に降った雨が上流からこの川に集まり、急な増水が発生したと考えられます。

※事故が起きた現場の上流側にあるアメダスの観測地点の9日間の降水量(日)を合計した値

鉄砲水に流される

死なないためには

・気象状況は、さかのぼって確認する

山に降った雨が上流に集まり、下流に影響を及ぼすのには時差があります。山間部では、山の上で降った雨によって急激な増水(鉄砲水)の危険も。当日は晴れていても、とくに台風や梅雨の時期、長雨が続く時期などは、1週間ほどさかのぼって気象状況を確認する必要があります。

遊びに行く川の水位の変化、ダムの放流情報などは、国土交通省の川の防災情報で確認できます。

・自分のいる場所に雨が降っていなくても

自分たちが遊んでいる場所ではたとえ雨が降っていなかったとしても、川の上流部や周囲の山に黒い雲がかかっていたり、雷鳴が聞こえたりしたら、川の水量が急激に増える可能性があります。すぐに川から離れましょう。

また、流木や落ち葉が流れてくる、水が急に冷たくなる、水が濁ってくる、これらは鉄砲水の前兆です。ただちに安全な場所に避難します。

・大人は子どもより下流に立つ

もし子どもが流されたら、大人が追い付こうと思ってもむずかしく、二次災害の危険もあります。危険な場所を事前に確認、近づかないようにし、大人もライフジャケットを着用して、あらかじめ子どもよりも下流でバックアップします。

複数人の子どもを引率する場合には、現地の下見を行ない、見守りとバックアップ体制を決めておきます。ですが、川での救助は専門的なトレーニングを積んだ人でないかぎり容易ではありません。危険の少ない場所を選び、ライフジャケットをはじめとした装備はぬかりなく。気象状況を慎重に確認のうえ、少しでもリスクがある場合は、中止や予定を変更する判断が必要です。

ライフジャケットを着用した大人は、常に子どもの下流側に立ち、流された際に備えてフォローする
ライフジャケットを着用した大人は、常に子どもの下流側に立ち、流された際に備えてフォローする。子どもからは離れないように
子ども版 これで死ぬ外遊びで子どもが危険にあわないための安全の話

子ども版 これで死ぬ
外遊びで子どもが危険にあわないための安全の話

監修 羽根田 治、藤原尚雄、松本貴行、山中 龍
大武 美緒子
発行 山と溪谷社
価格 1,540円(税込)
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子ども版 これで死ぬ 外遊びで子どもが危険にあわないための安全の話

夏に向けて、子どもと一緒に登山や、川遊び、海水浴などに出かける人も多いのではないでしょうか。しかしながら、子どもの外遊び中の事故はあとを絶ちません。今回は、子どもと一緒に外遊びに行く際に気をつけたい事例と、どうやったらそれを避けられるかの解説を『子ども版 これで死ぬ 外遊びで子どもが危険にあわないための安全の話』(山と溪谷社)から紹介します。

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