“キーワード”で泊まる日本アルプスのテント場

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登山者に絶大な人気を誇る日本アルプス。そんな日本アルプスにせっかく行くなら、テント場を目的にして計画を立てるのもおもしろい。テント泊をこよなく愛する高橋庄太郎さんが、さまざまなキーワードとともにおすすめのテント場を紹介する。

文・写真=高橋庄太郎

目次

誰もいない静かな場所岩魚留小屋(いわなどめごや)

北アルプス

岩魚留小屋

北アルプスのクラシックルートである島々(しましま)~徳本峠(とくごうとうげ)の間にあるだけに通過する登山者はそこそこいるものの、テント泊をする人は稀。どこがテント場なのかわからないほど元気よく草が生い茂っているが、これはすなわち、ここにテントを張って草を踏みつぶす人がほとんどいないということだ。小屋は休業中で、島々の深い谷には外界からの人工的な光は入らず、月と星の光のみ。島々~徳本峠の間は現在(2024年7月)通行止めだが、いつか泊まってみてほしい。

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テント泊指定地情報

5張、無料、水場あり(沢)、トイレなし(携帯トイレを持参すること)
※島々谷登山道は、今年度通行止め解除の予定。時期未定。

連泊して、縦横無尽に歩きまくる三俣山荘(みつまたさんそう)

北アルプス

三俣山荘

以前ここを〝ベースキャンプ〞として4連泊し、周囲の山々を歩き回ったことがある。3日間の中日のうち、1日目は鷲羽岳(わしばだけ)、水晶岳(すいしょうだけ)から高天原(たかまがはら)温泉へ。2日目は黒部川源流部から雲ノ平へ。3日目は三俣蓮華岳(みつまたれんげだけ)から黒部五郎岳(くろべごろうだけ)へ。1度の山行で、日本百名山3座、日本一山深い場所の秘湯、そして日本最後の秘境ともいわれる山上の別天地を楽しめ、しかも大半の荷物はテントに置いていけるから非常に身軽! こんな計画を立てられるテント場はほとんどない。

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テント泊指定地情報

80張、2,000円、水場あり(給水)、トイレあり(小屋)
三俣山荘 TEL 050-8882-5833
https://kumonodaira.net/mitsumata/

存在すらあまり知られぬ穴場ほこら小屋

南アルプス

ほこら小屋

このテント場があるのは、櫛形山(くしがたやま)の山腹。南アルプス北東の外れにあり、主稜線とは登山道でつながっていないこともあって、多くの人が見過ごしているのがもったいない。テント場は広く、草が生い茂っていて、日本アルプスのテント場とは思えないほど、実にワイルド。しかし沢を水源とした水はうまく、必要充分な程度だがトイレも設置されている。すぐ近くのほこら小屋は無人小屋で、悪天候のときは気楽に逃げ込めるのもいい。

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テント泊指定地情報

10張、無料、水場あり(沢)、トイレあり
富士川町役場産業振興課 TEL 0556-22-7202

谷間のワイルドな温泉で遊ぶ湯俣温泉晴嵐荘(ゆまたおんせんせいらんそう)

北アルプス

湯俣温泉晴嵐荘

ここ数年、毎年のように大水が出て、小屋の運営にも支障が出ていて気の毒なのが、湯俣温泉晴嵐荘だ。この小屋の真ん前にあるだけに、テント場のコンディションも毎年変化。砂地のくぼみをスコップで整えて使う露天温泉が今年楽しめるかどうかは、不明である。だが、歩いて10分程度の湯俣川左岸には天然記念物である〝噴湯丘〞があり、その異形を眺めながら足湯は味わえる(増水時以外)。もっとのんびり温泉を楽しむなら、小屋の内湯へ。

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テント泊指定地情報

20張、2,000円、水場あり(給水)、トイレあり
湯俣温泉晴嵐荘 TEL 090-5535-3667
http://seiransou.com/

隔絶された空間がたまらない五色ヶ原(ごしきがはら)

北アルプス

五色ヶ原

このテント場を管理している五色ヶ原山荘からは徒歩10分もあり、しかも地形の起伏で小屋は見えない。なんというか、このだだっ広いテント場だけが山中に孤立している感覚で、テント泊者のみが集まることで醸し出される自由な雰囲気が濃厚に漂う。こんな立地のテント場はほかにもあるが、ここが特別に思えるのは、黒部ダムを隔ててそびえる針ノ木岳(はりのきだけ)、屛風のように立ち並ぶ立山連峰などの凜々しい風景にぐるりと囲まれているからだろう。

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テント泊指定地情報

50張、1,500円、水場あり(流水)、トイレあり
五色ヶ原山荘 TEL 076-482-1940
https://goshikigahara.com/

恐ろしいほどの高所感!北穂高小屋(きたほたかごや)

北アルプス

北穂高小屋

強風が吹いてテントが飛ばされたら、かなりの確率で死亡事故に結びつきそうなのが、このテント場だ。僕はここでテント横に置いていたらしいレインウェアを吹き飛ばされた登山者を見たことがある。その真っ赤なウェアは涸沢のカールに続く急峻な岩場へ落ち、どうにも回収は不可能であった・・・。なにしろ北穂高のテント場は標高3100mで、キャンプ指定地としては日本一の高さ。高所恐怖症の人には無理かもしれない。

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テント泊指定地情報

20張、2,000円、水場あり(小屋)、トイレあり(小屋)
北穂高小屋 TEL 090-1422-8886
https://www.kitaho.co.jp/

日本アルプスで“いちばん新しい”テント場檜尾小屋(ひのきおごや)

中央アルプス

檜尾小屋

中央アルプスの稜線や尾根上にあるテント場は、最近までは駒ヶ岳頂上山荘のみだった。だから、中央アルプスでは数日かけたテント泊縦走は不可能だった。だが、檜尾避難小屋の増改築に伴って、2022年、小屋近くの平場にテント場が新規でオープン! これで木曽駒ヶ岳(きそこまがたけ)と空木岳(うつぎだけ)を連ねて、テント泊だけでの縦走ができるようになった。周囲の景色もすばらしく、気持ちがいいスペースだ。

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テント泊指定地情報

約20張、2,000円、水場あり(5分、夏以降は水場なし)、トイレあり
檜尾小屋 TEL 090-7957-7650
https://www.hinokio-chuoalps.com/

『山と溪谷』2022年6月号より一部編集して掲載)

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プロフィール

高橋 庄太郎(たかはし・しょうたろう)

宮城県仙台市出身。山岳・アウトドアライター。 山、海、川を旅し、山岳・アウトドア専門誌で執筆。特に好きなのは、ソロで行う長距離&長期間の山の縦走、海や川のカヤック・ツーリングなど。こだわりは「できるだけ日帰りではなく、一泊だけでもテントで眠る」。『テント泊登山の基本テクニック』(山と溪谷社)、『トレッキング実践学』(ADDIX)ほか著書多数。
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