そんなものを夏山登山に!? 山のエキスパートが持つ+αのアイテムとは

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今年も梅雨が終わり夏山シーズンイン! 夏山を登るうえで、装備の検討は欠かせません。登山靴、ザック、地図、レインウェア、行動食など、基本的な装備は、安全上外せないのは言うまでもありませんが、登山はなんといっても「楽しむ」もの。山のエキスパートたちは山に行くうえでどのような装備を“プラスアルファ”で持っていっているのでしょうか。おすすめのアイテムを4人のエキスパートに教えてもらいました。

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テンカラ竿

おすすめする人 
登山用品店さかいやスポーツ・高橋典孝さん

テンカラ竿

テント場の近くやルート上によい渓流があれば少しスケジュールをのんびり目に調整して、テンカラ竿を持って山に入ります。テンカラ釣りを楽しめる時間が半日でもあれば、なにも考えずに頭をリフレッシュさせることができ、その山行のいいアクセントになります。

例えば南アルプス北岳(きただけ)登山のときは日程を一日プラスして起点となる広河原(ひろがわら)にテントを張り、野呂川(のろがわ)で一日中テンカラ釣りをするだけの時間を作りました。体力を使う北岳登山の前にゆっくりと渓流と向き合う時間を作ったことで山行全体がより深みが増しました。

もちろん、山小屋などで魚券を購入し、地域のルールに従って楽しむこと、自然渓流のリスクを念頭に置いて実践することが大切です。

テンカラ釣り
暑い夏だからこそ、渓流で涼む時間があることで、登山がより楽しくなる
髙橋典孝

髙橋典孝(たかはし・のりたか)

登山ウェア、山道具の知識が抜群の東京都神田神保町のさかいやスポーツベテラン店員。登山、トレイルランニング、テンカラ釣りなどアウトドアはなんでも楽しむ。

 

フリント式の100円ライター

おすすめする人 
登山ガイド・芳須 勲さん

フリント式の100円ライター

夏の高山でお湯を沸かしてコーヒーを飲んでいるときに、これまで何度も見知らぬ登山者から「バーナーの着火装置が壊れてしまったので、ライターを貸してください。」と言われたことがあります。

それは故障ではなく、単に高所なので電子着火装置がうまく機能しないだけ。フリント式(ドラム型のヤスリを親指でシュッと回転させて着火するタイプ)のライターを使って着火すれば解決できるのですが、きっと知らなかったのでしょう。

そんなときに取り出すのが、コンビニなどでも簡単に手に入る使い捨てのライター、いわゆる「100円ライター」です。軽くて持ち運びやすく、お手頃価格。zippoなどの高価なライターだったら、返してもらえるのか心配で、のんびりコーヒーを楽しむ余裕がなくなってしまいます。

こういった使い捨てライターは、100円均一の店で買えば、4個入り110円(税込)で手に入ります。もはや100円ライターではなく「27.5円ライター」といったところ。

これをいくつかザックに忍ばせておけば、「貸してください」と言われたときにドキドキすることなく「明日のテン場でも必要でしょうから、差しあげますよ」と、大人の余裕をもったベテラン登山家を気取ることができるでしょう。

山頂で、のんびり楽しむコーヒータイム
山頂で、のんびり楽しむコーヒータイム。心と体の疲れを癒す、至福の時間なのですが・・・。
芳須勲

芳須 勲(よしず・いさお)

登山ガイドの「ヤッホー‼さん。」こと芳須勲さん。食事・運動・山の安全という3つの立場から、メディア、講演会、サークルなどを通じて、一生登れるカラダづくりの情報を発信する。

 

20万分の1地勢図

おすすめする人 
山岳ライター、登山ガイド・柏 澄子さん

20万分の1地勢図

遠くの山へ行くときや、長い縦走をするときに、20万分の1の地勢図持っていくことがある。登山に適しているのは2万5000分の1の地形図なので、それよりかなり大きな縮尺になる。

きっかけは高校生のころにあった。千葉県内の高校山岳部が集まり、福島県の安達太良山(あだたらやま)で雪上訓練が行なわれたとき、他校の学生が、東北道を走る往路のバスの中で20万分の1を広げていたのだ。車窓を流れる山並みを、地勢図と照らし合わせながら。そんな楽しみ方があるのかと目からうろこだった。

以来、私も持っていくようになった。夏のアルプス山行なんかにはうってつけだと思う。列車や車の中で楽しむこともできるし、山頂で使うのもよい。アプリだと山名が分かるだけの場合もあるので、山を構成する谷や尾根、峠、川などを立体的に把握するには、やっぱり地形図、地勢図。近くは手持ちの2万5000分の1で、遠く彼方は20万分の1。盆地や平野、あるいは大きな谷を挟んだ向こうにほかの山脈が連なっているのがわかる。

次に登りたい山が見つかったり、日本はなんて広くてたくさん山があるのだろうと思ったり、案外日本って小さいかもって感じたりしながら、大きな視野に立って自分の位置を認識できる。自分の進む先だけでなく、周囲を見渡すのも気持ちよい。

「読図」とはよく言ったもので、地図は読むもの。読み込んで、色んなことを感じ、発見するのが楽しい。

柏澄子

柏 澄子(かしわ・すみこ)

登山全般および山岳地域をテーマとして執筆活動を行なうライター。登山ガイド。著書に『彼女たちの山』(山と溪谷社)など多数。

(写真=渡辺洋一)

 

フライパン

おすすめする人 
山岳ライター・吉澤英晃さん

フライパン

普段から、山ではテントで眠ることが多い。となると、朝晩の食事は自分で作らないといけないわけで、本格的に登山を始めて間もないころは、インスタントラーメン+乾燥わかめが定番だった。

ただ、いつも同じ内容はさすがに飽きるので、徐々に味を選べるアルファ化米を導入したり、生米からご飯を炊いて食の質を高めたり、あれこれ工夫し始めた。そして、社会人4年目で入った山岳会で、私の山での食事スタイルは完成することになる。その会では、朝晩の食事当番がリーダーによって割り振られるのだが、それとは別に、各自が夕飯時におつまみと称して、なにか一品作るのが暗黙の了解になっていたのだ。

ある人は野菜炒めを作り、ある人は餃子を焼く。そこで活躍していたのがフライパンで、私も自然とフライパンを購入してあれこれ作るようになった。ステーキやチヂミを焼き、炒飯やパスタを作り、カレーのルーも食材から調理する。食に興味があれば、フライパンが1つあるだけで山での食事が華やかになるし、思案した料理を食べる楽しみも増えるのでおすすめだ。

フライパンがひとつあるだけで山での食事が華やかになる
家庭用並みに大きいものが使いやすい。重さに怯んで小さいものを買うと、使いづらい、なんてことになりかねないので注意されたし
吉澤英晃

吉澤英晃(よしざわ・ひであき)

登山用品を扱う会社の営業マンを経て、2018年からフリーライターとして活動。学生時代の探検部でアウトドアに出合い、いまは沢登りから雪山まで一年中登山を楽しむ。

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