武甲山で水歩荷。体力づくりをしながら、“ちょっといいこと”もできて達成感は倍増!

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読者レポーターより登山レポをお届けします。ケロケロさんは武甲山(ぶこうさん)で水歩荷をしてトレーニング。きつそうと思いきや、意外にも楽しそうです。

文・写真=ケロケロさん


梅雨の雨と猛暑の合間を縫って、歩荷トレーニングに行ってきました。 えっ、この暑いのに? わざわざ重い荷物を担いで山に登るわけ? ・・・それ、なにが楽しいの? と、私も思っていました、武甲山で水歩荷に目覚める前は。

秩父の名峰、武甲山(1304m)のメインルートは表参道コース。一の鳥居が登山口となります。 西武線横瀬駅から歩くと、石灰採掘場の大型車が行き来する道を2時間弱も登ることになるので、登山口までタクシーを利用するかマイカーがおすすめです。

狼の狛犬がある一の鳥居
狼の狛犬がある一の鳥居。奥の新しいトイレには靴洗い場、登山ポストがある

朝8時過ぎ、一の鳥居駐車場はすでに満車で、少し下の武甲山駐車場に車を停めました。今年新しくできた駐車場で、登山口までは思ったより近く、徒歩数分でした。

石灰石の採掘で削られた北面の姿とはうって変わって、南側には深い森が広がる武甲山。沢沿いの道を、丁目石に励まされながら登っていきます。ちなみに1丁目は一の鳥居登山口、山頂は52丁目です。

18丁目の不動滝の水は冷たくて、顔を洗うと気持ちいい! 水場の脇に「さあ、どれでも好きなの、持ってって下さい!」とばかりに空のペットボトルが積んでありました。この水をくんで、山頂トイレの貯水槽へ運ぶのが “武甲山水歩荷” 。水不足の山頂トイレへ水をくみ上げるボランティアをしつつ、歩荷トレーニングにもなるという、一石二鳥のアクティビティです。

武甲山山頂トイレは雨水をためる方式で、水は常に不足気味。管理する横瀬町では、水くみ用のペットボトルを準備して、途中の不動滝から山頂へ水を運ぶ協力を呼びかけています。ちなみに水洗トイレは大8L、小6Lの水が必要だそうです。

この日は5Lと2Lを1本ずつ、計7Lをザックに入れました。ザックの重量と合わせて15kg。重さが肩と腰にずっしりときます。不動滝から山頂広場まで、コースタイムでおよそ2時間。よし、がんばるぞ。

自分と同じく大きなザックを重そうに背負う人を見かけると、ご同類ですね!とちょっとうれしくなります。両手にそれぞれ5Lのペットボトルを持って軽々と登っていく人もいて、みなさんすごいなあ。

不動滝の水場
不動滝の水場

道は沢を離れ、杉の森をジグザグに登っていきます。高いところからオオルリやヒガラ、ミソサザイの声が聞こえて立ち止まってみたり、思わぬ山野草と出会って写真を撮ったり。下を向いてひたむきに登るとつらいので、ちょくちょく立ち止まっては、気をそらしながら歩きました。

スローペースながら順調に登って、中間地点となる大杉の広場に着きました。ここはベンチがある休憩スポット。人の途切れたタイミングを見計らって、シンボルである杉の巨木をハグしてみました。濃い杉の香りを胸いっぱいに吸って癒されます。

大杉の広場
大杉の広場

大杉の広場を過ぎると、登山道は湿りがちで滑りやすくなってきます。つらくてだんだん視界が狭くなってきました。がんばりどころです、あとちょっと。最後につづらになった道を三回折り返すと、山頂広場でくつろぐ人の声が聞こえてきました。着いた! がんばりました!

武甲山御嶽神社
武甲山御嶽神社。山頂は神社の裏手にある

広場では十数人の登山者が休憩していました。疲れ切っていたので、私も座り込んで、まずは休憩。持参のパンを食べながら見上げると、コナラやカエデなどの美しい黄緑色が目に入り、ほっとしました。なんだか荷物と一緒に、日常のもろもろの心配事も、肩から降ろしたような気分。

山頂広場にはスジグロシロチョウやアサギマダラなどのチョウがいた
山頂広場にはスジグロシロチョウやアサギマダラなどのチョウがいた

「着いたー!」「まずは水をトイレに」と、到着したグループがマンホールの方へ向かうのを見て、ようやく腰を上げました。私も、運んだ水を持って行かねば。

水は神社裏手のマンホールへ流し込む
水は神社裏手のマンホールへ流し込む

武甲山御嶽神社にご挨拶して、裏手の山頂へ向かいました。手すりの向こうに秩父市街が見下ろせるのですが、この日は真っ白。晴れていれば浅間山(あさまやま)や、遠く鹿島槍ヶ岳(かしまやりがたけ)まで見えることもあるそうです。

どこかユーモラスな狼の狛犬
どこかユーモラスな狼の狛犬

さて、計画では子持山(こもちやま)、大持山(おおもちやま)まで足を延ばす予定でした。けれど歩荷で体力を使い切ってしまいヘトヘトです。あまり余裕のない状態では危ういと判断し、来た道を下ることにしました。

実はこの夏テント泊を計画していて、テン泊装備を担ぎ上げる力があるか試す狙いもありました。軽くなったザックを背負い、ちょっと体力不足なのかな、などと考えながら下りました。途中、不動滝で空になったペットボトルをケースに戻しました。

ちょっといいことをした満足感と達成感を得つつ、体も鍛えられてしまう、武甲山水歩荷。今年もいいトレーニングになりました。

(山行日程=2024年7月6日)

MAP&DATA

ヤマタイムで周辺の地図を見る

コース

生川登山口(一の鳥居)~不動滝~大杉の広場~武甲山・往復(参考コースタイム:4時間50分)

ケロケロさん(読者レポーター)

ケロケロさん(読者レポーター)

散歩をするように山を歩いて、木々や草花の折々の姿や、生き物との偶然の出会いを楽しみたい。双眼鏡をぶらさげて、関東近郊の山をのんびり歩いています。

この記事に登場する山

埼玉県 / 関東山地

武甲山 標高 1,304m

 秩父の名山は年々形が崩されていく。東京から見ても、山頂部の変化が分かるようになってしまった。山名を武光山、秩父岳ともいう。山頂に日本武尊を祭る御岳神社がある。  武甲山のある地域は県立武甲自然公園に指定され、山の斜面は「武甲山石灰岩地特殊植物群落」に指定されていたが、今はこの地帯も完膚なきまでに破壊されてしまった。  現在は表参道の生川(うぶかわ)から登るしか方法はない。生川は畠山重忠の生誕地といわれている。表参道だけに道もしっかりしているが、山頂に近づくにつれて様相は一変する。御岳神社の裏手の展望台に立ってみると、山頂の石灰岩採掘の規模に目を見張る。下山は長者屋敷ノ頭を経て橋立に下るか、山稜を南下し大持山(おおもちやま)から鳥首峠へ下るとよい。  西武秩父駅を起点に生川から表参道を経て山頂に至り、橋立寺まで約5時間30分。  山頂の標高は三角点では1295mだが、最高点の標高は1304mとなる。

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