絶景写真を“ここ”で“こうやって”撮ろう! 上高地と槍・穂高を撮り続けて35年、渡辺幸雄さんのおすすめ撮影スポットをご紹介

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山岳フォトグラファー・渡辺幸雄さんは、北穂高小屋での小屋番経験があり、長年上高地(かみこうち)や槍ヶ岳(やりがたけ)・穂高岳(ほたかだけ)エリアを中心に山岳写真を撮り続けてきた。今回は、渡辺幸雄さんに「絶景写真」を撮るスポットと、そこでより魅力的な写真を撮るためのポイントを教えてもらった。

文・写真=渡辺幸雄

目次

大正池(たいしょういけ)から
穂高岳を撮ろう

上高地大正池

場所:上高地大正池
上高地に入って始めに目に入る山が焼岳(やけだけ)。そのあと、すぐに穂高連峰や大正池が目に飛び込んでくる。大正池は大正時代に噴火した焼岳が梓川をせき止めて誕生した池。大正池バス停から数百メートルほど戻った東電取水口にて。

ポイント①

立ち枯れ木を入れて、
上高地の雰囲気をアップ!

大正時代の噴火当時埋没したという立ち枯れ木。以前に比べるとめっきり少なくなってしまったが、今もなお残っている立ち枯れ木は大正池と上高地らしさを演出してくれる貴重な存在。大正池での絵作りのポイントにしたい。

ポイント②

霧がかかっていたら
シャッターチャンス!

霧が立ちこめた大正池はなかなか巡り合う機会が少ない。立ち寄った際にそのような状況だったら時間をかけていいシーンを狙ってみたい。霧は風景を現実離れした幻想的な世界に引き込んでくれる。

ポイント③

露出を調整して、雰囲気を演出!

ポイント②の「霧」を狙う場合、写真は露出(画面の明るさ)によって印象がだいぶ変わる。露出を落とし気味(暗め)にすると、このあと雨や悪天になるような重厚な感じがし、シックな印象に仕上がる。露出を明るめにすると雨上がりの軽やかなイメージになる。どちらを選ぶかは作家の判断次第である。


天狗池(てんぐいけ)から
槍ヶ岳を撮ろう

天狗池

場所:天狗池
槍沢中段の天狗原分岐から入り、20分ほどにたたずむ池。標高約2400mに位置し2つの池が並ぶが、上部の池は逆さ槍を映し出すことで知られる人気のスポット。夏の始めは水面が雪で覆われていることもある。

ポイント①

風が収まる「凪」を待て!

この池の特徴は、槍ヶ岳を鏡のように映し出すこと。風が吹き、さざなみが立つと正反射せず、残念ながら投影像がブレてしまう。時間をかけて風が収まるチャンスを待とう。じっくり対象と向き合うのも自然相手の撮影では重要だ。

ポイント②

池に映る山の写真は
上下のバランスが命!

池に映し出される倒立像と実像との組み合わせで撮る際は、上下のバランスがシンメトリーになるように。山の写真では空を削ることが多いが、この時だけは真ん中で上下を分けるのが正解。

ポイント③

残雪も映して撮影場所の環境を表現!

北アルプスの夏山の魅力は残雪があり、緑や高山植物があること。みずみずしくウェットで変化に富んだ多様性が特徴である。このすばらしい自然をどう切り取り、どのように写真に生かしていくかは撮影者個人の裁量でもある。残雪とのコントラストをバランスよくとらえたい。


北穂高岳から大キレット越しの
槍ヶ岳を撮ろう

北穂高岳

場所:北穂高岳
上高地から通称・横尾街道(よこおかいどう)と呼ばれる歩きやすい道をたどり横尾、涸沢(からさわ)を経て約9時間。槍ヶ岳をはじめ360度の大パノラマが展開し、北アルプスでも名だたる絶景地として知られる。山頂直下に北穂高小屋があり、朝夕の撮影に便利でカメラマンに人気の山小屋。

ポイント①

広角レンズで迫力を出そう!

北穂高岳からは大キレットを隔てて槍ヶ岳と対峙するので、迫力ある槍ヶ岳が狙える。大キレットを入れて槍ヶ岳を撮るには広角系レンズがいい。この写真では28mm。

ポイント②

雲が出てくると
唯一無二の写真が撮れる!

お盆を過ぎると朝夕の気温が下がるため、稜線では朝夕方に雲海や滝雲など、おもしろい雲が現われやすくなる。狙って撮れる対象ではないが、一期一会の風景との出会いを大切にしてチャンスをモノにしよう。

ポイント③

槍の穂先は天を切り詰めて撮ろう!

槍ヶ岳のような先鋭峰は空を取りすぎると、山の高さが表現されず迫力に欠ける写真になってしまう。できるだけ天を切り詰めて撮るようにしたい。

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プロフィール

渡辺幸雄(わたなべ・ゆきお)

1965年埼玉県越谷市生まれ。1987年東京綜合写真専門学校卒。北穂高小屋勤務を経て、フリーカメラマンに。近年はネパールのフォト・トレッキング・ツアー(アルパインツアーサービス主催)などの写真セミナーも開催。山岳雑誌やカメラ雑誌、カレンダー制作等で活躍中。日本山岳写真集団最終代表、(公社)日本写真家協会会員。

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