地元の宝を伝えて、守る。久万高原町・面河山岳博物館
豊かな自然や文化を有する山岳エリアを認定する日本山岳遺産。それぞれの認定地では美しい山を次世代へつなげる活動が行なわれている。今回は、愛媛県の石鎚山(いしづちさん)周辺で山や自然に関する講座などを行なう久万高原(くまこうげん)町と面河(おもご)山岳博物館を紹介。
取材・文=一ノ瀬伸、写提提供=面河山岳博物館
![尖ったピークが印象的な石鎚山系最高峰の天狗岳](https://www.yamakei-online.com/new_images/yama-ya/article/2024_05/20240527_yamaya_kikin02.jpg)
久万高原町・面河山岳博物館
Area:石鎚山Main activity:自然講座の開催
Group profile:
石鎚山麓に位置する愛媛・久万高原町や面河山岳博物館では、自然資源の掘り起こしや自然の魅力を発信する人材育成に取り組んでいる。近年は講座を通じて生物相の調査・記録を行なう。
https://www.kumakogen.jp/site/omogo-sangaku/
「石鎚山は校歌にもよく歌われる地元を象徴する山です。私の場合は、小中高とすべて歌詞に入っていましたね」
石鎚山の登山口近くにある面河山岳博物館の学芸員で、愛媛県生まれの矢野真志さんはそう話す。
西日本最高峰(1982m)で日本百名山に選定されている石鎚山。イシヅチボウフウやシコクイチゲ、イシヅチザクラなどの高山性植物も自生する「花の百名山」でもあり、人気の山だ。
矢野さんは「花や昆虫、野鳥などの生き物のつながりが感じられますし、地史もおもしろいです。皆さんが登っている天狗岳は昔、火山のマグマが固まってできたんです。ほかにも山岳信仰や暮らしとの関係性など、さまざまな分野から楽しむことができる山です」と説明する。
麓の久万高原町や町営の同博物館では、石鎚山をはじめとした地域の魅力を地元の人々によって伝えるため、発信役となる人材の育成に力を入れている。
町は、日本山岳遺産に登録された2010 年から数年にわたって「面河・石鎚キュレーター養成講座」を開催。山岳や自然に関心がある地域住民がコミュニティ・キュレーター(地域学芸員)になるべく、フィールド研修やモニターツアーを通じて学んだ。
![石鎚山の麓に広がる面河渓で行なったトコロジスト育成講](https://www.yamakei-online.com/new_images/yama-ya/article/2024_05/20240527_yamaya_kikin01.jpg)
また、2018年からは博物館主催で「トコロジスト育成講座」をスタート。参加者は「場所の専門家」を意味するトコロジストをめざし、写真の撮影方法や地図アプリの活用方法を学びながら花や昆虫などの調査を行なう。「自然を保全したりガイドしたりするために必要な基礎データを記録する取り組みです」と矢野さん。
各講座の参加者のなかには石鎚山でガイドを行なったり、地域のエコツアーに関わったりする者もいる。
「単なる道案内ではなく、科学的な知識を身につけ、保全に配慮しながらガイドできる人材育成を重視してきました」
価値をしっかりと伝えること、知ることが守ることにつながっていく。
![しっとりと美しい雨の日の面河渓](https://www.yamakei-online.com/new_images/yama-ya/article/2024_05/20240527_yamaya_kikin03.jpg)
★関連日本山岳遺産認定地:石鎚山 [ 愛媛県 ]久万高原町役場(2010年)
日本山岳遺産候補地を募集中! みなさまの活動を支援します
日本山岳遺産基金では、今年度の日本山岳遺産の候補地と支援団体を募集しています。認定された支援団体には、活動費を助成します。
支援団体の条件
- 法人格を有する団体。または、同程度に社会的な信頼を得ている任意団体
- 山岳環境保全などの活動を、特定の山岳エリアで3年以上行なっている団体
- 支援対象事業の実施状況、予算、決算などの財政状況について、当基金の求めに応じ適正な報告ができる団体
助成対象となる活動費の主な用途
- 資材・物品の購入など。またはこれらの修繕などの経費
- 旅費・交通費、宿泊費、食費、通信連絡費、現地事務所の光熱費などの経費
- 資料の翻訳、印刷、出版などに係る経費
助成金総額 250万円(予定)
詳細は日本山岳遺産基金のウェブサイトをご覧ください。
https://sangakuisan.yamakei.co.jp/isan-kikin/entry.html
(『山と溪谷』2024年6月号より転載)
プロフィール
![](/new_images/yama-ya/writer/125.jpg)
日本山岳遺産基金
日本の山々がもつ豊かな自然・文化を次世代に継承していくために2010年に設立。「山岳環境保全」「次世代育成」「安全啓発登山」を目的とし、日本山岳遺産の認定と活動団体への助成金拠出、上記目的に合致した各種イベントやキャンペーン、山と溪谷社の各種媒体を使った広報活動などを行なう。
https://sangakuisan.yamakei.co.jp/
日本山岳遺産の横顔
日本山岳遺産基金は、豊かな自然や文化を有する山岳エリアを「日本山岳遺産」として認定し、その地域で山岳環境保全や登山道整備などの活動を行なう団体に助成金の拠出および広報による支援を行なっています。ここでは、これまでに日本山岳遺産に認定された山岳エリアと活動団体について紹介していきます!
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