気象遭難を防ぐために、あらかじめ複数プランを準備しておきましょう 島崎三歩の「山岳通信」 第352号

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長野県内で起きた山岳遭難事例について配信している「島崎三歩の山岳通信」。第352号では、気象遭難を防ぐために山岳遭難救助隊が行なっているノウハウを披露。あらかじめ複数プランを準備しておくことの大切さを説明している。

8月1日に配信された『島崎三歩の「山岳通信」』第352号では、期間中に起きた16件の山岳遭難事例について説明。以下に抜粋・掲載する。

  • 7月22日(月)、 北アルプスの槍ヶ岳で、5人パーティで入山した60歳の女性が、槍沢を下山中に滑落、負傷した。

槍ヶ岳・槍沢での遭難現場/長野県警察本部ホームページ 山岳遭難発生状況(週報)7月30日付
  • 7月22日(月)、北アルプスの白馬乗鞍岳で、2人パーティで入山した66歳の女性が、白馬乗鞍岳を下山中に転倒、負傷した。

  • 7月22日(月)、北アルプスの北穂高岳で、5人パーティで入山した75歳の女性が、北穂高岳南稜を下山中に滑落、負傷した。

  • 7月22日(月)、八ヶ岳連峰の赤岳で、2人パ―ティで入山した48歳の女性が、赤岳から下山中に足を滑らせて転倒、負傷した。

八ヶ岳・赤岳での遭難現場/長野県警察本部ホームページ 山岳遭難発生状況(週報)7月30日付
  • 7月22日(月)、八ヶ岳連峰の天狗岳で、単独で入山した56歳の女性が、下山中に足を滑らせて転倒、負傷した。

  • 7月23日(火)、北アルプスの白馬岳で、9人パーティで入山した69歳の女性が、山小屋に宿泊中に体調不良により行動不能となった。

北アルプス・白馬岳での遭難現場/長野県警察本部ホームページ 山岳遭難発生状況(週報)7月30日付
  • 7月23日(火)、北アルプスの水晶岳で、2人パーティで入山した57歳の男性が、登山中に何らかの原因で滑落、死亡した。

  • 7月23日(火)、八ヶ岳連峰の本沢温泉で、2人パーティで入山した59歳の男性が、幕営中に持病の悪化で行動不能となった。

  • 7月23日(火)、黒斑山で、2人パーティで入山した69歳の男性が、黒斑山を登山中に体調不良により行動不能となった。

  • 7月23日(火)、北アルプスの五竜岳で、単独で入山した66歳の男性が、登山中に何らかの原因により滑落、死亡した。

  • 7月23日(火)、尾高山(南信)で、渓流釣りのため単独で入山した56歳の男性が、渓流釣り中に疲労により行動不能となった。

  • 7月23日(火)、北アルプスの槍ヶ岳北鎌尾根で、単独で入山した50歳の男性が、北鎌尾根の北鎌のコルに向けて登山中に滑落、負傷した。

槍ヶ岳・北鎌尾根での遭難現場/長野県警察本部ホームページ 山岳遭難発生状況(週報)7月30日付
  • 7月24日(水)、北アルプスの奥穂高岳で、3人パーティで入山した71歳の男性が、ザイテングラートを登山中に滑落、負傷した。

  • 7月24日(水)、北アルプスの爺ヶ岳で、単独で入山した73歳の男性が、下山中に疲労により行動不能となった。

  • 7月24日(水)、中央アルプスの檜尾岳で、単独で入山した76歳の女性が、下山中に道に迷い行動不能となった。

  • 7月24日(水)、中央アルプスの中岳で、単独で入山した51歳の男性が、登山中に道に迷い行動不能となった。

  • 7月24日(水)、北アルプスの布引山で、単独で入山した67歳の男性が、疲労により行動不能となった。

  • 7月24日(水)、北アルプスの燕岳で、3人パーティで入山した59歳の男性が、下山中にバランスを崩して転倒、負傷した。

  • 7月24日(水)、北アルプス横通岳で、単独で入山した76歳の男性が、登山中に疲労により行動不能となった。

北アルプス・横通岳での遭難現場/長野県警察本部ホームページ 山岳遭難発生状況(週報)7月30日付
  • 7月24日(水)、北アルプスの針ノ木岳で、4人パーティで入山した81歳の男性が、針ノ木岳を登山中に疲労により行動不能となった。

  • 7月25日(木)、北アルプスの奥穂高岳で、単独で入山した75歳の男性が、ザイテングラートを下山に滑落して負傷した。

  • 7月26日(金)、北アルプスの白馬鑓ヶ岳で、58歳の男性がの山小屋で入浴中に意識を失い行動不能となった。

北アルプス・白馬鑓ヶ岳での遭難現場/長野県警察本部ホームページ 山岳遭難発生状況(週報)7月30日付
  • 7月26日(金)、北アルプスの槍ヶ岳で、2人パーティで入山した71歳の男性が、槍沢を下山中に疲労により行動不能となった。

  • 7月26日(金)、北アルプスの横尾谷で、2人パーティで入山した75歳の女性が、登山中に滑落、負傷した。

  • 7月27日(土)、北アルプスの奥穂高岳で、2人パーティで入山した57歳の男性が、幕営中に体調不良により行動不能となった。

北アルプス・奥穂高岳での遭難現場/長野県警察本部ホームページ 山岳遭難発生状況(週報)7月30日付
  • 7月27日(土)、八ヶ岳連峰の美濃戸南沢で、単独で入山した53歳の男性が、下山中に足を滑らせて転倒、負傷した。

  • 7月27日(土)、北アルプスの燕岳で、2人パーティで入山した61歳の男性が、燕岳合戦尾根を登山中に発病、死亡した。

  • 7月27日(土)、中央アルプスの宝剣岳で、6人パーティで入山した82歳の男性が、八丁坂を下山中に落石を避けようとして転倒、負傷した。

  • 7月27日(土)、北アルプスの東天井岳で、22人パーティで入山した72歳の女性が、登山中に浮石を踏んで転倒、負傷した。

北アルプス・東天井岳での遭難現場/長野県警察本部ホームページ 山岳遭難発生状況(週報)7月30日付
  • 7月28日(日)、鷲ヶ峰(諏訪地方)で、3人パーティで入山した47歳の女性が、下山中にバランスを崩して転倒、負傷した。

  • 7月28日(日)、八ヶ岳連峰の北横岳で、4人パーティで入山した54歳の女性が、登山中に疲労により行動不能となった。

 

長野県警山岳安全対策課からのワンポイントアドバイス

先週(7月22日の週)、長野県内では、31件の山岳遭難が発生しました。発生した31件のうち、登山を目的とした山岳遭難は30件で、遭難者の平均年齢は64.4歳でした。

7月24日に檜尾岳で発生した山岳遭難は、気象を要因とした疲労や道迷い遭難と考えられます。標高2000mを超える山域での雨は、とても冷たく、体力を奪い、視界もよくないことから、道迷いなども発生しやすくなります。また、意識して水分や食料を摂らないと、次第に体温が下がっていき、筋肉が動かしづらくなり、もう歩けない・・・と行動不能になってしまいます。

気象遭難を防ぐには、“あらかじめ行動しない”ことが一番です。私たち山岳遭難救助隊も山を歩く縦走訓練では

  • 訓練日の1週間くらい前から
  • 訓練日の前日
  • 訓練中

は、随時、天候を確認して、行動するかどうか判断をします。実際に、6月に行った縦走訓練では、白馬岳周辺で2泊3日の訓練を予定していましたが、初日の天候が悪かったため、1日目には行動せず、技術訓練に切り替え、2日目から行動を開始しています。

この訓練の際は、前日から天候悪化が予想されていたため、プランA“予定通りの2泊3日の縦走”とプランB“1日目技術訓練・1泊2泊の縦走”のプランをあらかじめ準備していました。当日、登山口で天候の回復が見込めなかったため、プランBを選択し訓練に臨んでいます。

皆さんも天候の確認はもちろんのこと、あらかじめ複数プランを準備し、撤退や行動できない・しないことも考慮して、計画を作成しましょう。

信州山のグレーディング』を参考にし、自身や仲間の体力・技術に見合った山選びをして、万全の準備で登山を楽しみましょう! その山はあなたの実力に見合っていますか?

 

“はじめての夏山登山” “岩場での歩き方” YouTube動画を公開中!

登山初心者の遭難が増えています。動画では、初心者が安全登山を実践するうえで重要なポイントを説明しています。

また、遭難の多い岩稜地帯での対処法についても、『岩場での歩き方(岩場に適した服装)』『岩場での歩き方(登り方)』『岩場での歩き方(下り方)』に分けて、詳しく解説しています。

計画の前にぜひ活用してください(長野県山岳総合センターとの協同により制作)。

⇒YouTube動画はこちら

プロフィール

島崎三歩の「山岳通信」

信州の山岳遭難現場と全国の登山者をつなぐために発行。「登山用品店舗スタッフ」「登山情報サイトを利用する登山者」「長野県内の各地区山岳遭難防止対策協会」などに対して、長野県の山岳地域で発生した遭難事例を原則・1週間ごとに、「安全登山」のための情報提供をしている。

⇒バックナンバーはコチラ!

島崎三歩の「山岳通信」

長野県では、県内の山岳地域で発生した遭難事例をお伝えする「島崎三歩の山岳通信」を週刊で配信。その内容をダイジェストで紹介する。

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