登山中の体調不良が多発、疲労の原因となる脱水やカロリー不足とならないための行動を 島崎三歩の「山岳通信」 第353号

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長野県内で起きた山岳遭難事例について配信している「島崎三歩の山岳通信」。第353号では、疲労から来る遭難事故が多発していることについて言及。疲労の原因となる脱水やカロリー不足とならないための行動を促している。

8月8日に配信された『島崎三歩の「山岳通信」』第353号では、期間中に起きた22件の山岳遭難事例について説明。以下に抜粋・掲載する。

  • 7月29日(月)、北アルプスの西岳で、2人パーティで入山した54歳の男性が、西岳でテント泊中に発病して死亡した。

  • 7月29日(月)、北アルプスの西岳で、上記同行者が発病・救助された際、54歳の女性も技量不足で行動不能となった。

  • 7月29日(月)、八ヶ岳連峰の北横岳で、4人パーティで入山した75歳の男性が、下山中に何らかの原因で発病して死亡した。

  • 7月30日(火)、中央アルプスの檜尾岳で、単独で入山た66歳の男性が、空木岳を経由して下山中に岩に足を取られて転倒、負傷した。

  • 7月30日(火)、中央アルプスの空木岳で、2人パーティで入山した65歳の女性が、池山尾根を下山中に転倒、負傷した。

  • 7月30日(火)、北アルプスの槍ヶ岳で、4人パーティで入山した73歳の男性が、上高地から槍ヶ岳に向けて登山中に、疲労と体調不良により行動不能となった。

  • 7月30日(火)、八ヶ岳連峰の天狗岳で、単独で入山した56歳の女性が、硫黄岳から下山途中に足を滑らせて転倒、負傷した。

  • 7月30日(火)、北アルプスの爺ヶ岳で、3人パーティで入山した83歳の男性が、柏原新道登山口から爺ヶ岳付近の山小屋に向けて登山中に疲労により行動不能となった。

  • 7月30日(火)、北アルプスの燕岳で、3人パーティで入山した66歳の女性が、燕岳から中房登山口に向けて下山中に、疲労により行動不能となった。

  • 7月31日(水)、八ヶ岳連峰のニュウで、単独で入山した61歳の男性が、ニュウから稲子湯に下山中にルートを誤って道に迷い、行動不能となった。

  • 8月1日(木)、北アルプスの唐松岳で、10人パーティで入山した59歳と53歳の女性2人が、猿倉登山口から入山して唐松岳に向けて縦走中に、落石により負傷した。      

  • 8月1日(木)、北アルプスの小日向山で、2人パーティで入山した57歳の女性が、猿倉登山口から白馬鑓温泉に向けて登山中に転倒、負傷した。

  • 8月1日(木)、八ヶ岳連峰の権現岳で、12人パーティで入山した19歳の男性が、赤岳から権現岳に向けて縦走中に体調不良を訴え、行動不能となった。

  • 8月1日(木)、八ヶ岳連峰の天狗岳で、2人パーティで入山した43歳の女性が、天狗岳から唐沢鉱泉に向けて下山中に体調不良を訴え、行動不能となった。

  • 8月1日(木)、大穴山で、単独で入山した52歳の男性が、登山中に道に迷い、行動不能となった。

  • 8月2日(金)、北アルプスの燕岳で、8人パーティで入山した75歳の女性が、山小屋に宿泊中に発病して行動不能となった。

  • 8月3日(土)、八ヶ岳連峰の赤岳で、2人パーティで入山した58歳の男性が、文三郎尾根を下山中に足を滑らせて転倒、負傷した。

  • 8月3日(土)、北アルプスの西穂高岳で、3人パーティで入山した62歳の男性が、西穂高岳付近を登山中にバランスを崩して滑落、死亡した。

  • 8月3日(土)、北アルプスの奥穂高岳で、5人パーティで入山した60歳の女性が、奥穂高岳から岳沢に向けて吊尾根を下山中に、つまずいて転倒、負傷した。

  • 8月3日(土)、北アルプスの槍ヶ岳で、11人パーティで入山中した15歳の男性が、槍ヶ岳東鎌尾根を登山中に体調不良により、行動不能となった。

  • 8月3日(土)、北アルプスの蝶ヶ岳で、2人パーティで入山した77歳の男性が、長塀尾根を下山中に疲労により、行動不能となった。

  • 8月4日(日)、北アルプスの唐松岳で、2人パーティで入山した37歳の女性が、唐松岳方面に向けて八方尾根を登山中に疲労で膝の痛みを訴え行動不能となった。

長野県警山岳安全対策課からのワンポイントアドバイス

先週(7月29日の1週間)、長野県内では22件の山岳遭難が発生しました。

疲労による行動不能や、疲労が蓄積する下山時の転倒や滑落といった遭難が、特に多く発生しています。連日、熱中症警戒アラートが発表されていますが、標高の高い北アルプスなどの山域でも傾向は同じで、気温が高い日が続いています。また、標高が高い山域では日差しをさえぎる樹林がなく、強い日差しの中で長時間行動することとなります。疲労遭難の多くは脱水やカロリー不足が原因なので、こまめな水分やカロリー、塩分補給が、足の痙攣や熱中症による行動不能を防ぎます。

このような疲労による遭難を防止するためのポイントして、

  • 意識してこまめに水分補給
  • 水分補給は水やお茶ではなく、経口補水液やスポーツドリンクを飲む
  • 水分補給に併せてカロリーや塩分補給をする

など休憩の都度、意識して補給することが重要です。バテてから補給しても、すぐには回復しませんので、バテる前のこまめな補給を心掛けてください。

  • 登山時の補給対策として、
  • 1.登山前に、500㎖の水分(塩分)を補給する
  • 2.登山中は、30分ごとに250㎖の水分(塩分)を補給する
  • 3.登山後は、500㎖以上の水分(塩分)を補給する

を意識して行なうと効果的に補給できるのでお試しください。

信州山のグレーディング』を参考にし、自身や仲間の体力・技術に見合った山選びをして、万全の準備で登山を楽しみましょう! その山はあなたの実力に見合っていますか?

脱水防止・安全登山推進キャンペーンを実施します

(1)8月09日(金)8:00~ 北アルプス八方池山荘前

(2)8月10日(土)4:30~ 八ヶ岳山荘前

(3)8月11日(日)5:30~ 上高地インフォメーションセンター前/横尾山荘前

長野県山岳遭難対策特別アドバイザー・国際山岳医の大城和恵氏の監修のもと、登山中に脱水症にならないための効果的な水分補給のポイントなどを直接、アドバイスするとともに、経口補水液「OS-1」(株式会社大塚製薬工場)を配布します。

また、主要登山口に設置している「登山相談所」の活用、「信州 山のグレーディング」を参考にした体力・技術に合った山選び、登山計画書の提出などについても呼びかけます。

プロフィール

島崎三歩の「山岳通信」

信州の山岳遭難現場と全国の登山者をつなぐために発行。「登山用品店舗スタッフ」「登山情報サイトを利用する登山者」「長野県内の各地区山岳遭難防止対策協会」などに対して、長野県の山岳地域で発生した遭難事例を原則・1週間ごとに、「安全登山」のための情報提供をしている。

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島崎三歩の「山岳通信」

長野県では、県内の山岳地域で発生した遭難事例をお伝えする「島崎三歩の山岳通信」を週刊で配信。その内容をダイジェストで紹介する。

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