北アルプスなど各地で積雪。連休の登山は要注意

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10月5日、各地で初雪が観測された。平年を大きく上回る高温が続いた9月から一転、10月に入って気温は急降下。4日から6日にかけて、北アルプスをはじめとする高山では降雪があった。標高3080mの槍ヶ岳山荘周辺では、吹きだまりやすい場所などでは10〜20cmの積雪があったという。

2023年10月6日 写真=槍ヶ岳山荘

強風で飛ばされて雪が付いていない箇所もあるが、吹き溜まりでは20cmを超える積雪も(2023年10月6日 写真=槍ヶ岳山荘

北アルプス北部の白馬岳では、6日の最低気温が−6.7℃まで冷え込んだ。朝9時の時点で北の風9.2m/s、視程50mの吹雪となっており、登山道にも雪が積もった。

2023年10月6日 写真=白馬山荘

午前9時の山荘前。降雪が続き、吹き溜まりで40~50cm、風で雪が飛ばされているような所は、氷がむき出しになっていた(2023年10月6日 写真=白馬山荘

中央アルプスの木曽駒ヶ岳にほど近い宝剣山荘では、6日朝に−4℃まで気温が下がり、宝剣岳周辺の岩稜も白い霧氷に彩られた。千畳敷カールの遊歩道も凍結するなど、滑りやすい状況となっているという。

2023年10月6日 写真=宝剣山荘

今年一番の冷え込みとなった(2023年10月6日 写真=宝剣山荘

7日から9日にかけてのスポーツの日の連休は後半で天気が崩れるとみられるエリアもある。登山の際は気象情報を確認して、積雪がある場合は雪山装備で臨みたい。また、日中解けた雪が明け方に再度凍結して滑りやすくなることが多いので、雪がほぼ解けた場所でもチェーンスパイクなどの装備が必要だ。ダウンウェアやアウターシェル、グローブなどの充分な防寒対策もお忘れなく。

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この記事に登場する山

長野県 岐阜県 / 飛騨山脈南部

槍ヶ岳 標高 3,180m

 鋭角に天を突く岩峰でそのものずばりの命名、しかも北アルプス南部の登山道が集中する位置のよさ。槍ヶ岳は北アルプス南部の鎮である。  行政区分からいえば長野県の大町市、松本市と岐阜県高山市との境にそびえている山である。地理的条件も実に絶妙な場所といえる。  南から穂高連峰の縦走路、東から常念山脈や燕岳からの表銀座コース、谷筋では上高地から梓川、槍沢を遡っていく登山道、新穂高温泉から蒲田川右俣、飛騨沢を登るコースと、北アルプス南部のすべてのコースが槍ヶ岳に集中し、中央部へは西鎌尾根が唯一の回廊となって双六岳に通じる、北アルプス南部の扇の要である。  しかも鋭い槍の穂先のような姿は、日本の氷河地形の典型でもある。地質は硬いひん岩で、氷河が削り残した氷食尖峰。東西南北の鎌尾根も氷食地形、槍沢、飛騨沢、天上沢、千丈沢はU字谷とカールという、日本の氷河地形のサンプルぞろいである。  登山史上で初めて登頂したのは江戸時代の文政11年(1828)の播隆上人。4回登って3体の仏像を安置し、鉄鎖を懸けて信者の安全な登拝を可能にした。登路は安曇野の小倉村から鍋冠山を越えて大滝山へ登り、梓川に下って槍沢をつめている。今も残る槍沢の「坊主ノ岩小屋」は播隆が修業した籠り堂だ。  近代登山史の初登頂は明治11年(1879)の英人W・ガウランド。1891年には英人W・ウエストンも登っている。日本人では1902年の小島鳥水と岡野金次郎。穂高・槍の縦走は1909年の鵜殿正雄で、ここに槍ヶ岳の黎明が始まった。大正11年(1922)には3月に、慶応の槙有恒パーティによる積雪期の初登攀があり、同年7月7日には早稲田と学習院が北鎌尾根への初登攀に挑んでいる。早稲田は案内人なしの2人パーティで、槍ヶ岳頂上から独標往復。学習院は名案内人小林喜作とともに末端からと、方式も違う登攀でともに成功した。  その後も北鎌尾根ではドラマチックな登攀が行われ、昭和11年(1936)1月には、不世出の単独行者、加藤文太郎の遭難、昭和24年(1949)1月の松濤明、有元克己の壮絶な遭難が起きている。加藤の遺著『単独行』と松濤の手記『風雪のビヴァーク』は登山者必読の書である。  登山道で直接登るコースは、上高地から槍沢コース経由で槍ヶ岳(9時間30分)と、新穂高温泉から飛騨沢コース(8時間40分)の2本。ほかに穂高連峰からの縦走コース(7時間30分)、燕岳からの表銀座コース(8時間40分)、双六小屋から西鎌尾根コース(6時間)と数多い。

富山県 長野県 / 飛騨山脈北部 後立山連峰

白馬岳 標高 2,932m

 白馬岳は、槍ヶ岳とともに北アルプスで登山者の人気を二分している山である。南北に連なる後立山連峰の北部にあって、長野・富山両県、実質的には新潟を加えた3県にまたがっている。  後立山連峰概説に記したように、この山の東面・信州側は急峻で、それに比して比較的緩い西面・越中側とで非対称山稜を形造っている。しかし信州側は山が浅く、四カ庄平をひかえて入山の便がよいため登山道も多く、白馬大雪渓を登高するもの(猿倉より所要6時間弱)と、栂池自然園から白馬大池を経るもの(所要5時間40分)がその代表的なものである。  越中側のものは、祖母谷温泉より清水(しようず)尾根をたどるもの(祖母谷温泉より所要10時間)が唯一で、長大である。  白馬三山と呼ばれる、本峰、杓子岳、鑓ヶ岳、そして北西に位置する小蓮華山の東・北面は、バリエーション・ルートを数多く有し、積雪期を対象に登攀されている。  近代登山史上では、明治16年(1883)の北安曇郡長以下9名による登山が最初であるとされている。積雪期では慶大山岳部の大島亮吉らによる1920年3月のスキー登山が初めての試みである。  白馬岳の山名は、三国境の南東面に黒く現れる馬の雪形から由来したといわれる。これをシロウマというのは、かつて農家が、このウマが現れるのを苗代(なわしろ)を作る時期の目標としたからであって、苗代馬→代馬(しろうま)と呼んだためである。白は陸地測量部が地図製作の際に当て字したものらしい。代馬はこのほかにも、小蓮華山と乗鞍岳の鞍部の小蓮華側の山肌にも現れる。白馬岳は昔、山名がなく、山麓の人々は単に西山(西方にそびえる山)と呼んでいたのである。また富山・新潟側では、この一連の諸峰をハスの花弁に見立てて、大蓮華山と総称していたようである。  この山からの眺望はすばらしく、北アルプスのほぼ全域はもとより、南・中央アルプス、八ヶ岳、頸城(くびき)や上信越の山々、そして日本海まで見渡すことができる。頂の展望盤は、新田次郎の小説『強力伝』に登場することで知られる。  日本三大雪渓の1つ、白馬大雪渓は登高距離が2kmもあり、全山にわたる高山植物群落の豊かさ、日本最高所の温泉の1つ白馬鑓温泉、高山湖の白馬大池や栂池自然園などの湿原・池塘群、こうした魅力を散りばめているのも人気を高めている理由である。また、白馬岳西面や杓子岳の最低鞍部付近などに見られる氷河地形、主稜線などで観察できる構造土、舟窪地形など、学術的な興味も深い。山頂部の2つの山荘(収容2500人)をはじめ山域内の宿泊施設も多い。

長野県 / 木曽山脈

木曽駒ヶ岳 標高 2,956m

 中央アルプスの最高峰である駒ヶ岳は、伊那谷では西駒ヶ岳と呼び、東駒ヶ岳と称される甲斐駒ヶ岳と区別している。一方、木曽谷の人はこの山を木曽駒ヶ岳と呼び、現在はこの名が一般的になっている。山名の由来は、全国の駒ヶ岳がそうであるように、晩春に中岳から将棊頭山の山腹にかけて現れる駒の雪形によっている。  この山は山岳宗教の山として古くから登られており、天文元年(1532)に木曽上松の徳原春安という人が山頂に駒ヶ岳神社を建てたと伝えられている。近代登山の対象として登られたのは明治24年(1891)8月のW・ウエストンの登山で、友人とともに上松口から登頂、その著書に紀行を載せている。  山頂一帯はハイマツの緑のジュウタンが敷きつめられ、花崗岩砂の白さと見事なコントラストを描き出している。西に木曽前岳(2826m)、南に中岳(2925m)、さらに東には伊那前岳(2883m)を擁し、登山道は四方から集中している。3000mにちょっと欠けるが、その頂からの展望はすばらしい。日本アルプスの中央に位置しているだけに、北アルプスの山並みと乗鞍岳、そして目の前の御岳山、さらに伊那谷を隔てて大パノラマが楽しめる南アルプスと、見飽きることがない。  また稜線や山上湖の周辺では高山植物も多く見られ、イワウメ、イワギキョウ、アオノツガザクラ、タカネシオガマなど、色とりどりの花々が登山者を迎えてくれる。特に中央アルプスの特産種であるコマウスユキソウは、いわゆるエーデルワイスの仲間で、この山域でのみ見られる花である。  登山コースは四通八達しているが、ロープウェイを利用して千畳敷から乗越浄土、中岳を経て登頂するものがいちばん楽なコース(千畳敷から1時間30分)。次に新田次郎の小説『聖職の碑』の舞台でもあるクラシックな、桂小場(かつらこば)から将棊頭山を越えて山頂に至るコースは静かで、中央アルプスらしいムードを楽しめる(桂小場から6時間30分)。そのほか北御所登山口から(7時間弱)、宮田高原から伊勢滝を経て山頂に至るコース(7時間弱)などが伊那側からのルート。  一方、木曽側からは木曽福島コース(山頂まで7時間弱)と、木曽側では最もよく利用されている上松コース(7時間弱)の2つがある。いずれにしても、伊那、木曽いずれかの谷から山頂に至り、登りとは反対の谷に下山するようなコース設定をすれば、木曽駒ヶ岳の東西2つの顔と、伊那谷、木曽谷双方の雰囲気を楽しむことができる。

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