クマ事故で入山禁止。八甲田山は解除の見通し経たず。札幌・三角山や秋田・鹿角などでも登山規制

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各地でクマの目撃、事故が相次ぐなか、一部の山では登山道が閉鎖される事態となっている。青森県の八甲田山(はっこうださん、1585m)では北八甲田エリアで登山道が閉鎖されている。これから海の日の連休、夏休みシーズンに加えて、8月には青森市のねぶた祭も開幕し、八甲田山は登山・観光のハイシーズンを迎えるが、入山規制の解除の見通しは立たない状況だ。

右から大岳、井戸岳、赤倉岳(2023年6月26日撮影 写真=よっしーさん)
  • 青森県自然保護課「クマの出没に注意してください!」

https://www.pref.aomori.lg.jp/soshiki/kankyo/shizen/kuma_cyuui.html

青森県の八甲田山ではクマの目撃情報が相次いでいたが、6月に入ってタケノコ採りをしていた人が襲われる事故が連続した。21日には酸ヶ湯(すかゆ)温泉と睡蓮沼(すいれんぬま)の間でタケノコ採り中の女性が太ももをひっかかれる事故が起きたほか、翌22日には硫黄岳(いおうだけ)付近で女性が持参のおにぎりを奪われる事故があった。さらに25日、酸ヶ湯温泉の地獄沼(じごくぬま)近辺でタケノコ採りの女性がツキノワグマに襲われて死亡。この事故を受けて、北八甲田エリアは6月29日から入山禁止となった。封鎖された登山口は酸ヶ湯温泉登山口のほか、石倉岳(いしくらだけ)登山口、谷地(やち)温泉登山口、田代平雛岳(たしろだいひなだけ)登山口、赤倉岳(あかくらだけ)登山口、八甲田ロープウェイ遊歩道の6カ所。最高峰の大岳(おおだけ)を含む、北八甲田の主要エリアが登れない状況となっている。

「ツキノワグマの主食のブナの実が昨年不作となったためか、冬眠から目覚めたツキノワグマが躍起になってタケノコをほお張り、行動範囲も広くなっているようです」と周辺の登山道整備活動などを行なう十和田山岳振興協議会事務局の横浜慎一さんは話す。関係機関によって事故を起こした個体の捕獲作業も始まっているが、7月9日時点で捕獲されていない。八甲田登山を計画している場合はこまめに状況をチェックしよう。

ヤマタイムで周辺の地図を見る

北海道・札幌市の三角山でヒグマ出没

北海道では、7月5日に札幌中心部の三角山(さんかくやま)〜盤渓(ばんけい)ルートに設置されたカメラでヒグマが確認され、登山道が閉鎖された。三角山は市街地に隣接して散策などの利用者が多く、同日は近隣の住宅地でもクマの目撃情報があった。札幌市は3カ所ある登山道すべてを封鎖して対策を進めている。

  • 札幌市「市民の森・自然歩道・都市環境林におけるヒグマ出没情報」

https://www.city.sapporo.jp/ryokuka/top/higuma/

秋田県・鹿角市などの山林でもクマ事故で入山禁止

秋田県鹿角市十和田大湯で5月18日に遭難者(後日遺体で発見)を捜索中の警察官2人がツキノワグマに襲われた事故を受け、一帯は入山禁止となっている。事故を起こしたツキノワグマの個体は捕獲できておらず、規制は11月末まで続く。なお、近くでは2016年にクマによる計7件の人身事故で4人が死亡している。主に山菜採りのフィールドではあるが、秋田県内ではほかにも立ち入り禁止になっているエリアがあるので、注意が必要だ。

  • 秋田県警察「クマによる人身被害の発生と入山禁止場所一覧について」

https://www.police.pref.akita.lg.jp/kenkei/news/p20240627140123

この記事に登場する山

青森県 / 奥羽山脈北部(八甲田山とその周辺)

八甲田山・大岳 標高 1,585m

 八甲田山の最高峰。一般的には、高田大岳と区別する意味から八甲田大岳とも呼ばれている。すりばち状の爆裂火口があり、山頂には宗教法人八甲山神社の、石で造られた祠がある。  八甲田山の中では最も人気が高い山で、登山客も圧倒的に多く、そのために高山植物が枯死し、さらに裸地面積が拡大するなど自然への悪影響が顕著に現れ、問題化している。  一帯は自然公園法に規定された国立公園の「特別保護地区」でありながら、そこを横断する北八甲田ロープウェイ建設計画が地元青森県で持ち上がったが、計画自体が無謀そのものであり、自然保護の理念とあまりにも背反することから1989年に計画中止となった経緯もある。  この山の人気が高まった原因は、昭和43年(1968)の八甲田ロープウェイ開設にある。これによって田茂萢岳山頂までゴンドラで運ばれた登山者は、ごく簡単に、楽しみながら大岳に登れるようになった。  赤倉岳、井戸岳を経由するコースと、上毛無岱の高層湿原を通ってゆくコースがある。途中の井戸岳の鞍部には大岳ヒュッテがあり、2時間弱で山頂に着く。  下山路は往路を引き返すものと、ほかに酸ヶ湯温泉に下る2つのコースがある。1つは仙人岱を通るコースで、もう1つは上毛無岱から下毛無岱を経て下るコースである。この逆コースで大岳に登る場合、ともに山頂まで2時間弱。  一般的には酸ヶ湯温泉を起点に仙人岱コースを登り、距離の長い毛無岱コースを下山路として使っているようだ。樹林帯に囲まれた仙人岱にはヒュッテがあり、この仙人岱から小岳を経て高田大岳に至る縦走路が分かれている。  また八甲田大岳登山の起点となる酸カ湯温泉は昔からの湯治場だが、1954年に国民温泉に指定され、男女混浴が今も続いている。訪れる登山者やスキーヤー、観光客も多い。  八甲田大岳は全体的に迫力に欠けるが、こぢんまりとして初心者には絶好の山である。湿原、お花畑、雪渓、どれをとっても規模は小さいながら変化に富む。山頂からの展望もよく、南八甲田の峰々や横沼はもちろん、青森湾や青森空港の滑走路も見渡せる。  道標も完備し、迷うこともない。ただし冬の気象条件は厳しく、遭難事故なども発生しているので、充分な注意が必要だ。

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