開山直後に死亡事故多発の富士山。海の日連休はどうなる?

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7月10日、富士山の静岡側3ルート(須走、御殿場、富士宮)が開山を迎えた。ひと足先に開山した山梨側の吉田ルートを含め4ルートすべてが通行できることになり、残雪のために一部で通行止めになっていたお鉢巡りルートも同日開通したが、開山初日と翌日の2日間に4件の山岳遭難が発生し3人が死亡した。

晴れれば穏やかな富士山頂(2024年7月5日撮影 写真=ヤマアルキさん)

今夏は山梨側吉田ルートで1日の登山者数が4000人に制限されたほか、通行料2,000円の徴収も始まり、これを避けて登山者が静岡県側に流れる傾向も指摘されていた。7月10日の富士山は午後から風雨が強まり、荒れ模様の天気となったが、静岡側の初日とあって大勢の登山者が山頂をめざした。開山直後の遭難は、10日午後に剣ヶ峰付近で滑落した男性登山者が死亡したほか、御殿場ルート八合目付近で身動きが取れなくなっていた男性が死亡。11日早朝にも富士宮ルートの元祖七合目で行動不能の男性が死亡した。ほかにも、10日21時ごろ富士宮ルート六合目で行動不能になった女性が救助された。8日には吉田ルート八合目付近でも体調不良の外国人男性が急死する遭難が起きており、シーズン序盤ですでに死亡事故が多発する事態となっている。

海の日連休も多くの登山者が見込まれるが、日本一標高の高い山だけあって、天候が荒れたときの厳しさは他の山の比ではない。風雨や寒さによる低体温症のほか、高山病、突然死のリスクが高いことも富士登山の特徴といえる。無理のない計画やしっかりした装備はもちろんだが、体調、天気などのコンディションによっては登山を強行せず、中止したり、無理せず引き返す判断も必要になりそうだ。

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この記事に登場する山

山梨県 静岡県 / 富士山とその周辺

富士山・剣ヶ峰 標高 3,776m

 日本の山岳中、群を抜いた高さを誇る富士山は、典型的なコニーデ式火山。いずれの方向から眺めても円錐形の均整のとれた姿は美しく、年間を通して人々の目を楽しませてくれる。東海道本線や新幹線の車窓から見ると、右手に宝永山、左手には荒々しい剣ガ峰大沢が望め、初めて見る人の心を奪う。  昔は白装束姿で富士宮の浅間(せんげん)神社から、3日も4日もかけて歩き通したという話を古老から聞いたことがある。現在では、富士宮と御殿場を富士山スカイラインが結び、途中からさらに標高2400m辺りまで支線が延びているので、労せずして雲上の人になれる手近な山となった。  日本で一番高い山、美しい山であれば、一生に一度は登ってみたい願望は誰にでもある。7月、8月の2カ月間が富士登山の時期に当たり、7月1日をお山開き、8月31日を山じまいと呼ぶ。  山小屋や石室が営業を始めると、日本各地や外国の人々も3776mの山頂を目指して集まってくる。特に学校が夏休みに入り、梅雨が明けたころから8月の旧盆までは、老若男女が連日押し寄せ、お山は満員となり、登山道は渋滞し、山小屋からは人があふれる。  富士宮口から登ろうとする場合は東海道新幹線の新富士駅、三島駅などからの登山バスで五合目まで行き、自分の足で山頂へ向けて歩きだすことになる。山梨県側には吉田口があり、東京方面からの登山者が多い。  目の前にそびえる富士山はすぐそこに見えるため、山の未経験者は始めからスピードを出しすぎ、7合目か8合目付近でたいていバテてしまう。登り一辺倒の富士山は始めから最後まで、ゆっくり過ぎるほどのペースで歩くことがコツである。新6合から宝永火口へ行く巻き道が御中道コースで、標高2300mから2500mを上下しながら富士山の中腹を1周することができたが、剣ガ峰大沢の崩壊で通行不能になっている。  山慣れたパーティならば新6合から左に入り、赤ペンキや踏み跡を拾いながら、いくつもの沢を渡り3時間もかければ大沢まで行くことができる。辺りは樹林帯で、シャクナゲの群落やクルマユリやシオガマなどの高山植物が咲く。  9合目右側の深い沢に残る万年雪は、山麓からも見ることができる。富士宮口を登りつめると正面に浅間神社奥ノ院がある。隣は郵便局。もうひとふんばりすると、最高地点の剣ヶ峰。山頂にはかつては毎日データを送り続けていた気象観測所跡が残っている。天候に恵まれたならば噴火口の周囲を歩く御鉢巡りが楽しめる。

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