春本番の高尾山で新緑と桜のお花見 山中の茶店で味わうそば
1年を通じて多くの登山者でにぎわう高尾山(たかおさん)で、下山メシならぬ「道中メシ」。新緑と桜を満喫し、稜線の茶店で景色を楽しみつつ、おいしいそばを味わった。
写真・文=西野淑子
高尾山から小仏城山(こぼとけしろやま)へ、桜のお花見ハイキング。
高尾山口駅に集合し、6号路を少し歩いて1号路に入り、高尾山の山頂をめざした。歩き始めから道沿いのモミジの花やスミレに夢中になり、1号路の舗装路に入ってからもヤマルリソウやチゴユリ、ミミガタテンナンショウなど、草花を見つけては歓声を上げ、まったく歩みが進まない。花好きにとって、この時期の高尾山は「宝の山」であり、高尾山を歩くのは「宝探し」なのだ。
花好きの先輩に花や樹木のことを教えてもらい、たくさん花の写真を撮りながら、ようやく高尾山の山頂に到着。桜がちょうど満開になっていた。大見晴園地に立つと富士山(ふじさん)はうっすら雲の中だったが、丹沢(たんざわ)の山々はきれいに見渡せた。
モデルコース:高尾山〜小仏城山
コースタイム:歩行ルート:高尾山口駅(1時間40分)高尾山(35分)一丁平(30分)小仏城山(1時間25分)日影バス停 合計4時間10分
風味よく、すっきりした味わいのそば
今日のお昼は奥高尾の細田屋さんにしよう、そう決めていた。
高尾山から小仏城山方面に向かう。山頂からいったん下り、少し登り返したところがもみじ台。モミジの大木が並び立つ中に、「細田屋」がある。素朴な山の茶店のたたずまいが愛らしい。
店前の広場にはテーブルとベンチが置かれていて、既に多くの登山者でにぎわっていた。多くの人が注文する人気メニューがなめこ汁。やさしい味わいの味噌汁に、なめこがたっぷり。ふわりと散らされたミツバもよい香りで食欲をそそる。なめこ汁をオーダーして、持参のお弁当を食べる人も多い。
今回はそばを味わおうと思っていて、お弁当は持参しなかった。
店頭のカウンターで注文をする。シンプルなざるそばも、高尾山名物のとろろそばもいいけれど、なんとなく心惹かれて「山菜そば」をオーダー。温かいのと冷たいのがあるが、今日は暑いので冷たいほうにした。同行者たちはとろろそばやざるそばをオーダー。
天気がよく、多くの登山者が行き交う。道沿いには桜の花が咲き、芽吹いたばかりの木々との色合いがなんとも美しい。富士山は見えないけれど、幾重にも連なる山々の眺めがすばらしい。やわらかな日差しが降り注ぎ、時折風も吹き抜ける。春の山はいいなあ、なんて気持ちがいいんだろう。
ぼんやりと待っていると、お店の方が料理を持ってきてくれた。
あら、思ったよりも量が多いかも。わさびとねぎが添えられた小皿はモミジの形、かわいらしいなあ。たっぷりの山菜、少しだけなめこも混じっている。
トッピングの具材をすべて混ぜ合わせて、いただきます。
細めでコシのあるそば。のどごしがよく、つるつるっと食べられる。温かいそばもいいけれど、そば本来の風味を楽しむなら、冷たいそばをシンプルに味わうのがいいよねえ。山菜のシャキシャキした食感もいい感じ。同行者たちも一心不乱にそばを味わっている。そうなんだ、本当においしいものを食べているときって、無言になるんだよ。
あっという間に食べ終えてしまった。ごちそうさまでした。
春の日差しが心地よくて、このあたりでボーッと過ごすのもよさそうだけど、今日のお花見山歩きはここからが本番。素敵な桜並木、花風景が楽しみで仕方ない。
・・・このぶんでは下山がだいぶ遅くなりそうだけど、まあいいや。花好きの面々と目一杯、春の高尾山を楽しみ尽くそうじゃないか。ザックを担いで再び歩き始めた。
細田屋
もみじ台に立つ茶店。店の前からは富士山がきれいに眺められる。名物はたっぷりなめことミツバの風味がよいなめこ汁。
電話 | 042-659-2646 |
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住所 | 東京都八王子市南浅川町4225 |
アクセス | 高尾山山頂から約10分 |
プロフィール
西野 淑子(登山ガイド・フリーライター)
初心者向け登山ガイドブックや山岳雑誌などで取材・執筆を行なうフリーライターで、登山ガイドの資格を持つ。関東近郊を中心に低山歩きから沢登り、雪山登山まで楽しむオールラウンダー。気の合う仲間と山を歩き、下山後においしいものでお腹と心を満たすことに無上の喜びを感じている。
下山メシのよろこび
登山後、すなわち下山後の楽しみの一つが、山麓にあるグルメ。ご当地の名物料理もあれば、鄙びた駅前に立つ小さな食堂で出す普通の料理まで、その楽しみは幅広い。 登山ガイド・フリーライターの西野淑子が下山後に味わった数々のとっておきのお楽しみを紹介する。