残雪の乗鞍岳に登り、泊まれる温泉BAR136で白濁硫黄泉と本格カクテルを堪能

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ひとり気ままに山と温泉を楽しむ温泉登山。登山前後に泊まりたい至福の温泉宿を紹介します。第47回は残雪の乗鞍岳(のりくらだけ)に登り、山麓の泊まれる温泉BARへ。

写真・文=月山もも


夏から秋にかけては標高2702mの畳平(たたみだいら)までバスで行くことができ、気軽に登れる3000m峰として知られる乗鞍岳。4月下旬から6月いっぱいまで運行している「乗鞍岳春山バス」を利用して、残雪の乗鞍岳を歩いてきました。

大雪渓の急斜面を直登し、雪の感触を楽しむ

乗鞍高原観光センターから乗鞍岳春山バスに乗り、45分ほどで終点の「大雪渓・肩の小屋口」へ。車窓からは立山黒部アルペンルートの「雪の大谷」さながらの雪の壁を眺めることができました。

乗鞍岳春山バス
乗鞍岳春山バス終点「大雪渓・肩の小屋口」

ちなみに春山バスの終点は5月末までは「位ヶ原山荘」です。6月1日より「大雪渓・肩の小屋口」まで延伸して運行する予定です。

バスを降りるとすぐそこに大雪渓が。アイゼンを付けてさっそく登り始めます。

乗鞍岳の大雪渓

雪の感触を確かめながら自分で歩きやすいルートを探して歩くのは、この時期ならではの楽しみだなと思います。後半はかなりの急斜面になるので、アイゼンの爪をしっかりと食い込ませるようにして登っていきました。

乗鞍岳の大雪渓

急斜面を登りきると乗鞍岳の主峰、剣ヶ峰(3026m)が見えました。

乗鞍岳の主峰、剣ヶ峰

剣ヶ峰の山頂からは槍ヶ岳(やりがたけ)や穂高連峰(ほたかれんぽう)などの北アルプスの山々のほか、御嶽山(おんたけさん)や南アルプス、八ヶ岳なども眺めることができます。

乗鞍岳
乗鞍岳

雲に隠れて見えない山もありましたが、山頂で三六〇度の絶景をひとしきり楽しんでから下山開始。

乗鞍岳

雪の急斜面を滑るように下っていき、バスで乗鞍高原観光センターに戻ります。

窓から心地よい風が入ってくる部屋でくつろぐ

この日は、乗鞍高原観光センターから徒歩10分ほどの場所にある温泉宿「泊まれる温泉BAR136」に宿泊。

乗鞍高原「泊まれる温泉BAR136」

玄関から入ってすぐのスペースにテーブルと椅子、そして書棚には大量の漫画が並んでいました。お風呂上がりにこちらで缶ビールなど飲みつつ、漫画を読んで過ごすのも楽しそうです。

客室は2階の和室で、一人では充分すぎる広さです。チェックイン時から布団が敷いてありました。

乗鞍高原「泊まれる温泉BAR136」
乗鞍高原「泊まれる温泉BAR136」

広縁にはソファとテーブルが置かれ、窓からは気持ちのよい風が入ってくる、くつろげる部屋でした。

露天風呂付きの貸切風呂で濃厚な硫黄泉に浸かる

浴室は内湯と露天風呂がセットになった浴室が2室あり、予約して貸切で利用します。

乗鞍高原「泊まれる温泉BAR136」
乗鞍高原「泊まれる温泉BAR136」

内湯は、床・壁・浴槽共に木で作られた、山の宿らしい浴室です。源泉は泉温46度ほどの硫黄泉で、加水も循環も消毒もしていない、湧き出たままのお湯がかけ流されています。時間が経つと白く濁ってくる、いかにも温泉らしい温泉です。

乗鞍高原「泊まれる温泉BAR136」

露天風呂では木々の緑を眺めながらの湯浴みを楽しめ、雰囲気もお湯もすばらしいです。浴室はチェックインから22時30分までと、翌朝は6時15分から9時30分まで利用可能です。

乗鞍高原「泊まれる温泉BAR136」
乗鞍高原「泊まれる温泉BAR136」

翌朝はもう1カ所の浴室で朝風呂を楽しみました。

とにかくお酒の種類が豊富ですべておいしい

食事は、朝夕ともに1階にあるレストランでいただきます。

夕食にはワンドリンクが付いており、ビールやカクテル、ソフトドリンクから選択可能とのこと。まずは生ビールをオーダーし、アサヒのプレミアム生ビール「熟撰」で喉を潤します。

乗鞍高原「泊まれる温泉BAR136」の夕食

それからあらためてドリンクメニューを眺めてみると、その豊富さに驚きました。カクテルの種類がとにかく多くて、日本酒のメニューも魅力的です。フランス製メロンシロップを使ったメロンクリームソーダなどもあり、お酒が飲めない方でも楽しめるラインナップ。

乗鞍高原「泊まれる温泉BAR136」の夕食

前菜の盛り合わせは生ハム、スモークサーモン、トマトのサラダなど、お酒が進むおつまみばかりで、あっという間にビールを飲み干してしまいました。

いつもは日本酒を飲むことが多い私ですが、この宿のオーナーは都内のホテルのバーに勤めた後、大宮でバーを営んでいた熟練のバーテンダー。ここはカクテルを飲んでみたい!と思い、オリジナルカクテルの中から「西区のカクテルあじさい」をオーダー。

乗鞍高原「泊まれる温泉BAR136」の夕食

爽やかな青色のカクテルには日本酒が入っているとのことでしたが、見た目以上に爽やかで飲みやすいお味でした。「西区のカクテル」という名前は、以前さいたま市の西区でバーを開いていたことからついたのだそうです。

乗鞍高原「泊まれる温泉BAR136」の夕食

次の一品、オニオングラタンスープも本格的な味わい。メイン料理はいくつかの選択肢から選ぶことができます。私は「ペンネのミートグラタン」を選んでいましたが、ボリュームたっぷり、かついくらでも食べられそうなおいしさです。

乗鞍高原「泊まれる温泉BAR136」の夕食
乗鞍高原「泊まれる温泉BAR136」の夕食

追加オーダーしたモヒートを飲みつつゆっくりと平らげ、最後にデザートのアイスクリームをいただいて、ごちそうさまでした。

翌日の朝食は、新鮮な野菜のサラダとソーセージ、オムレツ、ミネストローネにフレンチトースト。

乗鞍高原「泊まれる温泉BAR136」の朝食

食後のコーヒーも豆からこだわって仕入れているそうで、大変おいしかったです。

*紹介した食事、サービスの情報は2023年7月取材時の内容です。

泊まれる温泉BAR136

泊まれる温泉BAR136
料金 1泊2日付き1名利用/15,000円~
住所 長野県松本市安曇鈴蘭4306-3
電話 0263-31-6484
公式サイトを見る

この記事に登場する山

岐阜県 長野県 / 飛騨山脈南部

乗鞍岳 標高 3,026m

 飛騨側から眺めた山容が、馬の鞍に似ているところから「鞍ヶ峰(くらがね)」と名づけられ、それが乗鞍岳となった。北アルプスの中で最も大きな山容をもち、裾野を長く引く優美な姿は、昔から飛騨人にとってシンボルとして親しまれてきた。  記録によれば、乗鞍岳は今から1万年前まで噴火していた、とある。5個ないし6個の火山錐が集まった集合火山で、四ツ岳と大丹生岳、恵比須岳、富士見岳、権現岳(剣ヶ峰)などの火山錐が、北から南へと並び、最後の噴火でできた火口湖が、頂上剣ヶ峰とその直下の権現池である。また、山頂部一帯は数kmにわたっていくつかの火口湖、山上台地などが形成され、緑濃いハイマツ帯の間には夏でも豊富な残雪を残し、彩り鮮やかな高山植物とともに、乗鞍岳の雄大で美しい景観をつくり出している。  開山は大同2年(807)の田村将軍と伝えられるが、飛騨側からは天和年間(1680年代)に円空上人が平湯から登ったのが最初で、明治年代には近代登山の先駆者ガウランドやウエストンも登っている。円空上人や木食(もくじき)上人など行者の錬行(れんぎよう)登山もあるが、この山は、御岳や白山と異なって比較的宗教的ムードが稀薄な山であったのは、山容が穏和であり、地理的な条件が悪いことによるものであろう。近代登山幕開け以前は、地元の村人にとっては資源採掘や狩猟の山であり、雨乞い、豊作祈願のための生活の山であった。  明治末期から大正中期にかけては、平湯大滝、平湯峠、旗鉾、大尾根、子ノ原、青屋、上ガ洞、阿多野、野麦などから登山道が開かれ、また信州側からも番所(ばんどこ)、白骨(しらほね)、沢渡(さわんど)、前川渡からの道がつけられた。  だが、乗鞍岳がクローズアップされてきたのは、近代登山が始まってからであり、大衆化したのは太平洋戦争後である。旧陸軍が山頂近くの畳平に航空研究所を建設し、昭和18年には、平湯峠から自動車道路を開発した。やがて敗戦となり、この道路はバス道路に転用され、昭和23年には、高山から標高2700mの畳平まで登山バスが運行されるようになった。さらに昭和48年には乗鞍スカイラインが完成したことにより、マイカー登山ができるようになった。特に夏の最盛期には、頂上剣ヶ峰まで約1時間で登れる手軽さから、畳平周辺は登山者や観光客であふれ、都会の雑踏と変わらないありさまである。 また、摩利支天岳付近には、東京天文台コロナ観側所や宇宙線研究所なども建設された。  しかし、乗鞍岳は壮大な山である。昔の登山道の多くは今も健在で、池塘あり、滝あり、湿原あり、その変化と趣のある道は今でも無尽に存在し、その魅力はいささかも失われていない。  ※環境保護のため、乗鞍スカイライン(平湯-畳平間)、乗鞍エコーライン(乗鞍高原・三本滝-畳平間)は平成15年(2003年)からマイカー規制を実施しており、畳平へは、途中でシャトルバスに乗り換える必要がある。

プロフィール

月山もも

山と温泉を愛する女一人旅ブロガー。山麓の温泉宿を一人で巡るうちに「歩いてしか行けない温泉宿」に憧れを抱き、2011年から登山を始める。ゆるハイクから雪山登山まで、テントも一人で担ぐ単独登山女子。 ブログ「山と温泉のきろく」https://www.yamaonsen.com/に、温泉と登山のすばらしさについて綴っている。山と温泉に魅せられる人を増やすことが、人生のよろこび。著書に『ひとり酒、ひとり温泉、ひとり山』(KADOKAWA)。

ひとり温泉登山

山と温泉を愛する月山ももさんによる月1連載。登山前後に入りたい極上の温泉宿をご紹介します。

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