富士登山、なにを着る? なにを持っていく? 登山ガイドが教えます

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

富士登山に必要なウェアや道具について、登山ガイドが解説する。

文=吉澤英晃、写真=中村英史

ベースレイヤーはTシャツと長袖、どっちがいい?

化繊素材のTシャツがおすすめです

富士山に登るウェア・ギア

ベースレイヤーは直接肌の上に着ることで、かいた汗を素早く吸収してくれる。濡れても乾きやすい速乾性があるものを選ぶ。出発時の日中はTシャツ1枚で行動できることも多い。日焼けや寒さを気にする人は長袖を選んでもいいが、暑がりな人はTシャツで行動したほうが快適だ。ジップネックタイプはファスナーで胸元を換気でき、首筋の日焼けを防ぐことが可能。ラウンドネックタイプは普段着としても重宝する。どちらを選んでも間違いではないので好みで判断しよう。素材は基本、速乾性に優れる化学繊維100%のものを選べば問題ない。

速乾性を考えるとコットンが含まれていないものがいい。逆に化学繊維100%なら登山用でなくてもOK。2日間同じ服を着るなら、いやなにおいがつきにくいウール素材もおすすめ。

Tシャツで露出する腕にはアームカバーを装着するといい。この組み合わせだと、日焼けを防ぎつつ袖口から空気を取り込めるので、長袖よりも涼しい。体温調節も容易。

富士山に登るウェア・ギア

ミッドレイヤーはいわゆるフリースでOK?

タイトフィットのジャケットならOK

富士山に登るウェア・ギア

ミッドレイヤーは寒さを感じたときにベースレイヤーの上に着る。着たまま行動しても暑くなりすぎない適度な保温性が必要。ミッドレイヤーには、いわゆるフリースと呼ばれるウェアを選べば問題ない。ただし、着ながら行動することがあるので、あまりにも厚手のものは保温性が高いので適さないばかりか、重くてかさばるので荷物にもなってしまう。行動中の着用を考慮して適度な保温性があり、動きやすさと重ね着を考えて、着たときにブカブカしないタイトフィットのモデルを選ぼう。アノラックタイプよりもジャケットタイプのほうが脱ぎ着しやすい。

寒がりな人には、袖口にある親指を通すためのサムホールがあるモデルがおすすめ。袖口で手の平まで覆うことができ、手首を保温できるので温かい

富士山に登るウェア・ギア

フードがあると頭部を寒さから守れるが、すべてのウェアがフード付きだと重ね着したとき首元が窮屈になる。ミッドレイヤーか保温着のどちらかでフード付きを選ぼう。

NEXT 保温着とアウターレイヤー、パンツ
1 2 3 4 5

この記事に登場する山

山梨県 静岡県 / 富士山とその周辺

富士山・剣ヶ峰 標高 3,776m

 日本の山岳中、群を抜いた高さを誇る富士山は、典型的なコニーデ式火山。いずれの方向から眺めても円錐形の均整のとれた姿は美しく、年間を通して人々の目を楽しませてくれる。東海道本線や新幹線の車窓から見ると、右手に宝永山、左手には荒々しい剣ガ峰大沢が望め、初めて見る人の心を奪う。  昔は白装束姿で富士宮の浅間(せんげん)神社から、3日も4日もかけて歩き通したという話を古老から聞いたことがある。現在では、富士宮と御殿場を富士山スカイラインが結び、途中からさらに標高2400m辺りまで支線が延びているので、労せずして雲上の人になれる手近な山となった。  日本で一番高い山、美しい山であれば、一生に一度は登ってみたい願望は誰にでもある。7月、8月の2カ月間が富士登山の時期に当たり、7月1日をお山開き、8月31日を山じまいと呼ぶ。  山小屋や石室が営業を始めると、日本各地や外国の人々も3776mの山頂を目指して集まってくる。特に学校が夏休みに入り、梅雨が明けたころから8月の旧盆までは、老若男女が連日押し寄せ、お山は満員となり、登山道は渋滞し、山小屋からは人があふれる。  富士宮口から登ろうとする場合は東海道新幹線の新富士駅、三島駅などからの登山バスで五合目まで行き、自分の足で山頂へ向けて歩きだすことになる。山梨県側には吉田口があり、東京方面からの登山者が多い。  目の前にそびえる富士山はすぐそこに見えるため、山の未経験者は始めからスピードを出しすぎ、7合目か8合目付近でたいていバテてしまう。登り一辺倒の富士山は始めから最後まで、ゆっくり過ぎるほどのペースで歩くことがコツである。新6合から宝永火口へ行く巻き道が御中道コースで、標高2300mから2500mを上下しながら富士山の中腹を1周することができたが、剣ガ峰大沢の崩壊で通行不能になっている。  山慣れたパーティならば新6合から左に入り、赤ペンキや踏み跡を拾いながら、いくつもの沢を渡り3時間もかければ大沢まで行くことができる。辺りは樹林帯で、シャクナゲの群落やクルマユリやシオガマなどの高山植物が咲く。  9合目右側の深い沢に残る万年雪は、山麓からも見ることができる。富士宮口を登りつめると正面に浅間神社奥ノ院がある。隣は郵便局。もうひとふんばりすると、最高地点の剣ヶ峰。山頂にはかつては毎日データを送り続けていた気象観測所跡が残っている。天候に恵まれたならば噴火口の周囲を歩く御鉢巡りが楽しめる。

編集部おすすめ記事