こまめに休憩や補給をして、集中力を切らさず安全登山を 島崎三歩の「山岳通信」 第349号

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

長野県内で起きた山岳遭難事例について配信している「島崎三歩の山岳通信」。第349号では、遭難の多くが疲労が蓄積する下山時に発生していることを指摘。こまめな休憩、補給をして、集中力を切らさないことを促している。

7月12日に配信された『島崎三歩の「山岳通信」』第349号では、期間中に起きた5件の山岳遭難事例について説明。以下に抜粋・掲載する。

  • 7月1日(月)、北アルプスの横尾谷で、4人パーティと2人パーティで入山した男性5人(76歳、72歳、73歳、76歳、56歳)と53歳の女性が、涸沢から横尾に向けて下山中、降雨により川が増水し、登山道に浸水したため、行動不能となった。

  • 7月1日(月)、北アルプスの五竜岳で、2人パーティで入山した52歳の男性および女性が、五竜岳から遠見尾根を下山中になんらかの原因により滑落し、死亡した。

  • 7月3日(水)、中央アルプスの木曾駒ヶ岳で、単独で入山した63歳の男性が、茶臼山方面から下山中に吊り橋が渡れず、行動不能となった。

  • 7月4日(木)、白馬村神城の山林内で、山菜取りのため2人パーティで入山した86歳の男性が行方不明となっている。

  • 7月7日(日)、北アルプスの八方尾根で、7人パーティで入山した68歳の男性が、唐松岳から八方尾根を下山中に転倒して負傷した。

北アルプス唐松岳での遭難現場/長野県警察本部ホームページ 山岳遭難発生状況(週報)7月9日付

 

長野県警山岳安全対策課からのワンポイントアドバイス

7月8日の週は、長野県内で5件の山岳遭難が発生し、死亡遭難と行方不明遭難も発生しています。

遭難の多くは、疲労が蓄積する下山時に発生しています。下山時は足(大腿部)に自身の体重以上の負荷がかかり、登りの疲労も重なることから、思わぬスリップや転倒をする場合があります。下山時の転倒は、そのまま滑落して重大な遭難に直結しますので、集中力を切らさないように、こまめな休憩・補給をしましょう。

長野県内の標高が高い山域でも、日中は非常に高温となります。こまめな水分・エネルギー補給や休憩はもちろんですが、行動開始時間を早くして涼しい時間帯に登るなど「早出早着」を意識するとともに、ゆとりある計画を立てましょう。

今週は梅雨前線の影響により、不安定な天候が予想されています。先週もありましたが、ルート上の沢や川が増水し、横断できなくなる(戻れなくなる)遭難が発生しています。あらかじめ天気予報で悪天候が予想される場合は、登山の中止や延期などの検討をお願いします。

夏山シーズンとなりましたが、『信州山のグレーディング』を参考にし、自身や仲間の体力・技術に見合った山選びをして、登山を楽しみましょう!
https://www.pref.nagano.lg.jp/kankoki/sangyo/kanko/gure-dexingu.html

 

TOPICS

■本格的な夏山シーズンを前に各山域の最新の情報をHPなどで確認してください

◎中央アルプス駒ヶ岳ロープウェイ運行再開へ
駒ヶ岳ロープウェイは7月20日(土)の運行再開を予定していますが、天候などの状況により、変更される可能性もあるということです。
⇒中央アルプス駒ヶ岳ロープウェイ

◎白馬大雪渓は通行できません!
白馬大雪渓は崩落の危険があるため、7月4日から通行止めが続いています。 
⇒白馬村ホームページ

◎槍沢登山道および南岳新道は復旧しました
槍沢登山道は応急的な作業が完了、7月12日より通行規制は解除されます。山小屋では、再び雨の被害を受ける可能性もあるため、通行の際は安全に充分気を付けるよう呼びかけています。  
⇒槍ヶ岳山荘ホームページ

■“ガチなが”  信州の山小屋応援・山岳遭難防止対策プロジェクト2024募集開始

山小屋は、安全安心な登山環境の維持、登山者の憩いの場づくりに努めています。長野県遭対協は、登山者の安全を見守り、遭難者の救助活動にも尽力しています。信州の山岳を守るため、温かいご支援をお願いします。 
⇒共創型ふるさと納税受付サイト「ガチなが」

■北アルプスの山岳遭難防止にあたる常駐隊の活動が始まりました(Xで発信しています)

  • 北アルプス北部(後立山連峰) 7月11日~9月23日  58日間  18名  矢口 拓 隊長
  • 北アルプス南部(槍・穂高連峰)7月11日~10月15日  78日間  14名  加島 博文 隊長

期間中、隊員は登山者への啓発活動や登山道のパトロール、遭難者の救助などにあたります。

プロフィール

島崎三歩の「山岳通信」

信州の山岳遭難現場と全国の登山者をつなぐために発行。「登山用品店舗スタッフ」「登山情報サイトを利用する登山者」「長野県内の各地区山岳遭難防止対策協会」などに対して、長野県の山岳地域で発生した遭難事例を原則・1週間ごとに、「安全登山」のための情報提供をしている。

⇒バックナンバーはコチラ!

島崎三歩の「山岳通信」

長野県では、県内の山岳地域で発生した遭難事例をお伝えする「島崎三歩の山岳通信」を週刊で配信。その内容をダイジェストで紹介する。

編集部おすすめ記事