まずはこれだけ!読図の基本。地形図や等高線、地図記号の基礎知識を解説

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 地図読み、できますか? 地図アプリと登山地図だけでも、基本的には問題なく登山ができますが、地形図を使った読図ができるようになれば、行ける場所も楽しみも広がりますよ!

※本記事は、山と溪谷ch.動画を編集したものです。

 

穂高

経験豊富な登山者

いろいろ挑戦していきたい登山初心者

梓:今日は穂高さんと低山ハイキングに来ました。あれっ、穂高さんも地図アプリ使うんですね!?

穂高:使うわよ~。便利よね、コレ。ログもとれるし。なにより、拡大できるから老眼にやさしい!

梓:へー、てっきり、「紙とコンパスで地図読みができなきゃ登山者じゃない!GPSなんてけしからん!」ってタイプかと思っていました。

穂高:いやいやいや、そんなことないわよ。まぁ、昔は思ってなかったこともないけど、一度使ったら便利さを実感したから、それ以来いつも使ってるわね。とはいえ、読図をしなくなったわけじゃないわよ。今日だって紙地図も持ってきているし。

梓:そうなんですね~。私、読図はさっぱりなんですよね…いつも登山地図と地図アプリを使っていて、地形図だけで登山はしたことないですし…なんかとっつきにくいというか…

穂高:読図の世界は奥が深いしねぇ。じゃあ、今回は読図の基本について紹介しようかしら。地図読みがなぜ必要なのか、地形図のキホン、等高線と地図記号について、基礎的な内容をお話しするわね。

梓:はい!お願いします!

 

そもそも「読図」って必要なの?

梓:でも、実は、いままで登山地図と地図アプリで事足りているというか…困ったことないんです。正直に言うと、地形図で読図をする必要性をそんなに感じていないと言いますか…

穂高:あらあら。まぁ、一般登山道を歩く山登りで、登山地図があるエリアだったら、そう感じても無理ないかしらねぇ。コースタイム、水場、テント場、危険箇所…登山に必要な情報は登山地図に書かれているからね。高度差も色の濃淡で感覚的にわかるように工夫されているし。現在地を示してくれる地図アプリと併用すれば文句なし、よね。

梓:まさに、です。

穂高:でも、登山地図がない地方の里山歩きや、沢登りや雪山登山、山スキーのような一般登山道を外れる場所に行く山行をする人には、地形図での読図は必須になるわね。逆に言えば、読図ができれば、行動範囲がひろがるってわけ。

梓:確かに、山スキーにも憧れるなぁ…

穂高:でも、梓ちゃんみたいな、登山地図と地図アプリがメイン、という人にも読図の知識は少しだけでも知っていて欲しいわね。

穂高:地形図が読めるようになると、山の起伏がイメージできて、どんな風景かがイメージできるようになるわ。それはつまり、登山道の状況の予測を立てたり、現在地を把握したり、遭難防止にもなる、ということ。道迷い防止以外にも、いろいろなリスク管理ができるわよ。

例えば、山の傾斜から、「ここは急だからバテないようにしよう」とか「ここで休憩しよう」、という予測がたてられて、体力管理ができたりね。

まぁ、そんなふうにいろいろとメリットはもちろんあるんだけれど、なにより読図ができるようになると楽しいわよ!

梓:へ~、やっぱりもう少しがんばります!

 

地形図の基本

穂高:さっきから話に出てたけど、「地形図」とは、地図のなかでも、地形の情報に特化したもの。登山地図よりも等高線が見やすいから、地形を知るなら地形図がおすすめ。登山地図も地形図をもとに作られていて、地図アプリも、地形図がベースになっているものが多いわね。

穂高:では、まずは基本のルール、縮尺と方位の話から。梓ちゃん、「縮尺」ってわかる?

梓:えーと、実際の大きさに対して、どれくらい縮小したかの比、ですか?

穂高:そうそう。地形図の縮尺はいくつかあるけれど、地形が読み取りやすくて、更新頻度が高い2万5000分の1が地図読みにはベストよ。2万5000分の1地形図の場合は、地図上で4㎝なら実際の距離は1㎞、1㎝なら実際の距離は250m、という数字はわかりやすいから覚えておくといいわね。

梓:うーん、1㎝なら親指の爪くらいかな?

 

穂高:それから、方位について。地形図は上が北、というルールになっているの。読図のときは、常に位置関係と方位を関連付けられるようにするといいわよ。

梓:なるほど。ところで地形図って、本屋さんの地図コーナーとかに置いてあるんですか?

穂高:小さい本屋さんだと置いていないこともあるわね。大型書店や登山用具店で購入できるほか、日本地図センターのホームページでも電子版を好きな範囲でダウンロード購入できるわ。

それから、国土地理院のホームページ「地理院地図」では無料で閲覧ができて便利! 画質は粗いけど印刷もできるしね。

梓:へー、じゃあまずは地理院地図を見てみようかな。

 

等高線から傾斜や標高を知る

穂高:等高線とは、その名の通り、「等しい高さを結んだ線」のこと。等高線から地形のいろいろな情報が読み取れるわ。

穂高:では、こちらは開聞岳(かいもんだけ)の地形図。

梓:ぐるぐるしてますね…

穂高:開聞岳と言えば、百名山のひとつだけど、どんな形かわかる?

梓:えーと、富士山みたいな形ですよね。いわゆるヤマ!っていう感じの…おにぎりみたいな…

穂高:そうそう、だからこんなキレイに輪が並んだような地形図になるの。

穂高:等高線には、線の太さで違いがあるわ。

2万5千分の1の地形図の場合は、10mごとに「主曲線」、50mごとに少し太い「計曲線」が引かれていて、この数を数えれば、標高がわかるの。

穂高:じゃあ梓ちゃん、登山道のこの赤点の場所の標高はわかる?

梓:えーと…ここの計曲線が標高500mだから…標高450mですか?

穂高:正解!

穂高:等高線の間隔で、傾斜が急なのか、緩やかなのかもわかるわ。赤丸で示したあたり、山頂に近いところは等高線が詰まっているけれど……このあたり、裾野に近い青丸の場所はかなり間隔が広いでしょ?

梓:おー、確かに違いますね。

穂高:このことから、山頂に近いほど傾斜が急で、裾野に近いほど傾斜が緩やかな地形だということがわかるわ。

穂高:いま説明した等高線の間隔と傾斜の関係について、わかりやすく簡略した図にすると、こんな感じ。高低図にしてみると、ほら、等高線が詰まっているほど、傾斜が急だってことがわかるかな?

梓:おお、なるほど~。

穂高:さて、でもこんなにオニギリみたいなシンプルなカタチの山ばかりじゃないわよね。

梓:そうですよ~。もっとぐにゃんぐにゃんしてますよ…

穂高:じゃあ、次はぐにゃぐにゃな地形図…の話をする前に、地形を特徴づける要素の4つを確認しましょう。

 

地形を特徴づける要素

穂高:まずは、「ピーク」。山頂もピークの一つね。つまりは周囲よりも高い場所のこと。等高線で表すと、小さな輪になっているわ。場所によっては細長かったり、形状はいろいろね。

穂高:それから「尾根」。周囲と比べて線状に高いところ。「稜線」も尾根の一つね。

穂高:次に、「谷」もしくは「沢」。これは尾根とは逆に、周囲と比べて線状に低くなっている場所。

穂高:最後に、「鞍部(あんぶ)」。「コル」と言うこともあるわね。ピークとピークを結ぶ尾根のくぼんだところを言うわ。

梓:言葉としては、よく聞く単語ですね。でもあんまり意識してないかも…

穂高:そして、この4つの要素とさっき話した傾斜を等高線から読み取ると、地形をイメージすることができるの。慣れてくれば、平面の地形図が3Dになって浮き上がってくるわよ。

梓:スゴイ!

穂高:じゃあ、ぐにゃぐにゃの地形図に登場してもらいましょう。

梓:わー、よく見るやつですね。

穂高:等高線から地形をイメージするコツは、まずピークをみつけること。ピークは等高線が小さな輪になって閉じていてみつけやすいからね。

梓:うーん、ここですか?

穂高:ピークをみつけたら、今度は尾根と谷を見つけてみて。ピークから見て、でっぱっているところが「尾根」。逆に、ひっこんでいるところは「谷」よ。尾根は赤谷には青で、マーカーを引いてみてね。

梓:尾根はピークからでっぱっているから、こことここと…

谷は引っ込んでいるから、ここと、ここにも……

穂高:うんうん。

梓:なんとなく、地形が見えてきました!

穂高:いい感じね! ぜひ、登山中にも地図と目の前の地形を見比べてみてね。

 

地図記号から風景をイメージする

穂高:梓ちゃんは地図記号ってどれくらいわかる? 学校でもいくつか習ったんじゃない?

梓:えーと、そうですね。郵便局とか、交番とか…

穂高:そうそう。たくさんの種類があるけど、登山に関わる記号はいくつか覚えておきましょう。記号によっては、ピンポイントで場所がわかったり、ほかにも危険箇所や、場所のイメージにも役立つわ。今回は一部だけ紹介するわよ。

穂高:まずは、人工的な特徴物を表す記号。例えば神社・寺院や、記念碑、電波塔。これはピンポイントで現在地確認ができるわね。山小屋や避難小屋などの建物は小さくても記載されていることが多いから、目印になるわ。

穂高:徒歩道や軽車道など、道を表す記号も重要ね。徒歩道は幅1.5~3mの道のことで、登山道はこれ。軽車道は、登山道の前の林道や農道に使われるわ。ただ、廃道が記載されたままだったり、逆に新設の道は掲載されていないこともあるから要注意。

梓:えっ? 地形図って、間違ってることがあるんですか!?

穂高:実は間違いもあるのよ。特に里山のような場所に多い印象ね。

梓:へ~、意外だなあ。

穂高:さて、話を戻して、次は場所のイメージができる記号について。

穂高:これはガケの記号。土と岩の2種類があって、それぞれ下を表す向きもあるわ。ほかにも、岩や万年雪、砂礫地(されきち)なども、場所のイメージには役に立つわね。

梓:確かに、奥穂高岳の周りは岩とガケだらけですね…

穂高:ね、風景が見えてくるでしょ?

穂高:それから、植生を表す記号。広葉樹林や針葉樹林、ハイマツ帯などね。場所は必ずしも正確ではないけれど、目安にはなるわ。ハイマツ帯の記号があれば、そこが森林限界の上だということもわかるわね。

穂高:今回はほんの一部だけ紹介したけど、地形図をみて気になる記号があったら調べて覚えていくといいわね。

梓:はい!

 

まとめ

穂高:ということで、今回は読図の基本を紹介したけど、どうだった?

梓:思っていたよりも、難しくなさそうでした。むしろちょっと楽しいかも? ヒントのなかから自力で謎を解き明かすみたいな楽しさと、それから単純に、地形図を見ていると、妄想が膨らむというか…あっ、おもしろい地形だな~、見てみたいな~っていう感覚がわかってきた気がします。

穂高:そうなのよ、実は読図は楽しいの!じゃあ、今度は低山で読図練習山行に行ってみない?身に着けるなら、やっぱり実践あるのみよ!

梓:いいですね~、ぜひ!

 

動画版も公開中です!

 

【監修】
田島利佳
2012年オリエンテーリング日本チャンピオン(ロングディスタンス)。日本オリエンテーリング協会ディレクター1級、地図専任指導者(日本地図センター)。読図講習の講師やナビゲーションスポーツイベントのディレクターとして活躍中。

山と溪谷ch.

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