OM-1 Mark IIは最高の山カメラだと思う6つの理由

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読者レポーター・下島朗さんによる、デジタルカメラOM-1 Mark IIのレビューです。

文・写真=下島 朗


今年の春、山で使うカメラを買い替えました。結果は大満足です。山カメラとして、現時点で最高の選択だと思っています。その理由を、6つのポイントで紹介します。

OM SYSTEMのフラッグシップモデルが進化

山で使うカメラに関しては、それなりに試行錯誤してきたつもりです。

6年ほど前からは、主にキヤノンのPowerShot G7 X Mark IIというコンデジ(コンパクトデジタルカメラ)を使ってきました。これが名機で、一時は「これがあれば、もう一眼カメラはいらない」とまで思っていました。

しかし、だんだん欲が出て「もっと、こう撮りたい」という気持ちにカメラの機能が不足するケースが出てきました。そこで1年半ほど前から、OM SYSTEMのOM-5にM.ZUIKO DIGITAL ED 8-25mm F4.0 PROのレンズを付けてG7 Xと併用するようになりました。

OM-5は本体が小柄で気に入っていたのですが、今年2月にフラッグシップモデルのOM-1がMark IIに進化。その新機能の中に使ってみたいものがあって、ついうっかりカメラ店で注文したのが3月末。その新機能は、理由5で紹介します。

OM-1 Mark IIには3種類のパッケージがあります。本体のみ、本体と12-45mm F4.0 PROレンズのキット、本体と12-40mm F2.8 PRO IIレンズのキットです。今回は、3番目を選びました。

OM-1 Mark II
OM-1 Mark II本体とM.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO II。特にレンズがコンパクト

カメラ本体にレンズが付属するキット商品は一般的ですが、その多くは安価な標準ズームを付けたもの。カメラは高機能モデルなのに付属レンズが頼りないケースも見受けられます。

しかし、OM-1 Mark IIに付属の標準ズームは、どちらもPROレンズ。F4.0の12-45mmも、写りのよさには定評があります。さらに、いわゆる大三元の標準ズームであるM.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO IIをセットにするあたりOM SYSTEMの意気込みを感じます。

OM-1 Mark IIは、OM SYSTEMの最上位モデル。そのため、優れた機能がたくさん盛り込まれています。全部は書ききれないので、ここでは“山で使う”という点に絞って、なぜ最高の山カメラだと思うのか書いていきます。

理由1:コンパクトかつ多様な撮影に対応できる

現在、レンズ交換ができる主な一眼カメラは撮像センサーの大きさで分類することができます。フルサイズ、APS-C、マイクロフォーサーズの3種類です。

フルサイズは、撮像センサーが35mmフィルムの1コマとほぼ同じ大きさ。APS-Cは35mmフィルムより小さいAPS規格に近いサイズ。マイクロフォーサーズは、縦横がフルサイズの半分です。

フルサイズとAPS-Cは、よくもわるくもフィルム時代のレガシーという面があると思います。一方、マイクロフォーサーズはデジタル時代に合わせて策定された規格です。

マイクロフォーサーズのメリットは、撮像センサーが小さいためカメラ本体やレンズを小さくできること。最近はフルサイズのミラーレス一眼も本体が小型化していますが、レンズはフィルム時代と変わらず大きなまま。そして、重い。

たとえば、F2.8通しの標準ズームレンズの場合、キヤノンのRFレンズだと約900g、ソニーのEマウント対応レンズでも約695gです。一方、OM SYSTEMなら382g。その他の高性能レンズも押しなべてコンパクトです。

OM-1 Mark II
OM-1 Mark IIにM.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO IIを装着。レンズフードを外すと、さらに小さく見える。左は比較のために置いたiPhone14

山で写真を撮るには、まず山に登る必要があります。撮影機材も大事ですが、それ以前に登山用品を背負っています。なので、カメラの小型軽量化は極めて重要です。

カメラやレンズがコンパクトだと三脚も軽量化できます。OM-1 Mark IIには最大8.5段分という強力な手振れ補正機能があるので三脚を使うシーンは減っていますが、星空やタイムラプスの撮影、後述のハイレゾショットなどの際は必要です。

また、M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO IIは1本で多様な撮影に対応できます(理由3~6を参照)。そのため、持ち歩くレンズを減らすことができます。また、レンズ交換の頻度も減ります。どちらも山では、とてもありがたいことです。

なお、マイクロフォーサーズ規格のカメラはパナソニックからも発売されています。パナソニックの最上位モデルのほうが有効画素数が多いのですが、カメラ本体が重いので選択肢から外しました。

理由2:雨でも雪でも大丈夫、強い対環境性能

山で写真を撮るということは、ほぼ屋外で撮るということ。晴れた日ばかりではありません。最近は、防塵・防滴性能を強化したカメラが増えていますが、なかでもOM-1 Mark IIはトップクラス。

防滴仕様のレンズと組み合わせると、IP53という極めて高い防塵・防滴性能を発揮します。まだ試していませんが、本降りの雨の中で撮影を続けても問題ないとされています。もちろん、12-45mm F4.0 PROも12-40mm F2.8 PRO IIも防滴仕様です。

OM-1 Mark II
OM-1 Mark II
OM-1 Mark II
小雨の中で撮った丹沢の新緑。カメラもレンズも、なんの支障もなかった

また、カメラ本体の耐低温性能は-10℃。こちらもまだ試していないのですが、冬山での活躍にも期待しています。

理由3:レンズ1本で広角24mmから実質160mm相当まで対応

マイクロフォーサーズは撮像センサーがフルサイズ(35mmフィルム1コマ)の半分なので、レンズの焦点距離が実質2倍になります。つまり、12-40mmのレンズなら35mm判換算で24-80mmです。

今でこそ24mmから始まる標準ズームが一般的ですが、これは広角の領域。麓から山を撮るときも、山頂で展望を撮るときも、画角に不足を感じるケースは少ないと思います。

一方、80mmは中望遠といわれる領域。少し離れた山や花などを撮るときに重宝する画角です。ただ、もう少し寄りたい(クローズアップしたい)と思うこともあります。

そこで役立つのが、OM-1 Mark II本体に装備されているデジタルテレコンの機能です。クロップといって、画面の中央部を切り取って拡大し、実質的に2倍の焦点距離にします。つまり、24-80mm相当のレンズが48-160mm相当になります。

この機能はデジタルズームともいわれ、多くのデジタルカメラに搭載されています。ただ、私の経験ではこの機能を使うと画質が下がるカメラもありました。しかし、OM-1 Mark IIのデジタルテレコンは充分に実用レベルです。

OM-1 Mark II
丹沢・檜洞丸の山頂で、ワイド端(最も広角側)の12mm(24mm相当)で撮影。遠くに富士山が見える景色
OM-1 Mark II
同じ場所で、テレ端(最も望遠側)の40mm(80mm相当)で撮影。富士山の写真になったが左右の枝が気になる
OM-1 Mark II
デジタルテレコンを使って80mm(160mm相当)で撮影。富士山が主役の写真になった

季節や天候にもよりますが、遠くの山は意外に霞んでいます。よく晴れた日でも、クッキリと写らないことが多いもの。そのため、山では実質160mmあれば充分ではないでしょうか。さらにアップにしたいときは、あとでトリミングする方法もあります。

OM-1 Mark II
遠くに南アルプスの白根三山が見えた。テレ端の80mmで撮影。稜線が空に溶け込むのを避けるため暗めに撮った
OM-1 Mark II
デジタルテレコンを使って160mm相当で撮影。これなら構図は納得いくレベル。遠望している感も伝わってくる

露出アンダーなのは、あとでレタッチすることを前提としているためです。このような遠景写真は、適正露出で撮ってもシャープになりません。撮影後の調整で以下のようにできます。

OM-1 Mark II
フォトレタッチソフトでトーンを調整した。初夏の白根三山が白く輝く

理由4:マクロ撮影まで対応できる驚愕の寄り

マイクロフォーサーズの弱点として、背景が「ボケにくい」という人がいます。一般に、人物や花、料理や小物などを撮るときは、狙った1点にピントが合っていて背景は柔らかくボケている写真がいいとされています。マイクロフォーサーズだと、こうした写真が撮りにくいというのです。

これは、レンズの焦点距離が長いほどボケやすいという物理的な法則があるからです。撮像センサーが小さいマイクロフォーサーズの場合、50mm相当の画角でも実際の焦点距離は25mm。だから「ボケにくい」と。

しかし、次の写真を見てください。レンズはF2.8ですが、少し絞ってF3.5で撮っています。それでも被写界深度(ピントが合って見える範囲)が浅く、もっと絞ってもよかったかもしれません。

OM-1 Mark II
登山道脇のコケを手持ちで撮影。ピントが合っている範囲が浅く、背景はボケている

花の写真も以下のとおり。すべて手持ちで撮っています。しっかり背景がボケて、まるでマクロレンズを使ったようです。

OM-1 Mark II
登山道で見つけたイワカガミ。まず、花や葉の特徴がわかるように全体を撮影
OM-1 Mark II
次に、テレ端の40mm(35mm判換算80mm)にして花をクローズアップ
OM-1 Mark II
さらに、デジタルテレコンを使って80mm相当(35mm判換算160mm)で撮影

レンズを付け替えることなく、これだけ寄ることができます。

こうした写真が撮れるのは、12-40mm F2.8 PRO IIの最短撮影距離が0.2m(20cm)と短いから。これは、レンズの先端から被写体までの距離ではなく、カメラの中にある撮像センサーから被写体までの距離です。

実際、12-40mm F2.8 PRO IIにレンズフードを付けて花を撮っていると、撮影者からはレンズフードが花に接触するのではないかと思うような距離感です。

最大撮影倍率はテレ端で0.3倍ですが、35mm判換算すると0.6倍。一般的な標準マクロが1.0倍なので、それには及びませんが、小さな花にこれだけ撮れるなら充分ではないでしょうか。

理由5:ライブGNDで、空も山も適正露出で撮れる!

OM-5からOM-1 Mark IIに買い替えた最大の理由が、このライブGNDの機能です。まずは、作例をご覧ください。

OM-1 Mark II
遠くの富士山と空は明るくて、手前の木はやや暗い。ごく普通の写真だ

この状況で、富士山に露出を合わせると手前の木がさらに暗くなってしまいます。これを解決するのがライブGNDです。

OM-1 Mark II
ライブGND機能で富士山と空を暗くした。見本のため効果を強めに設定している。手前の木は鮮やかになった

この効果は傾けることもできます。次の2枚は、手前にある日陰の山の稜線が傾いているので、ライブGNDの効果も稜線に合わせて傾けました。

OM-1 Mark II
ライブGND未使用。手前の山は完全に日陰
OM-1 Mark II
ライブGNDを使用。日陰の山も木々のトーンが見えるようになった

フィルムの時代から、NDフィルターというものがあります。晴天の雪山などで明るすぎる(光が多すぎる)ときや、滝や渓流の撮影でシャッタースピードを遅くしたいとき、レンズの前に装着するサングラスのようなものです。NDフィルターによって、カメラに入る光の量を減らすことができます。

一般のNDフィルターは画面全体が均一に暗くなるのですが、風景写真では空が明るくて手前が暗いシーンが多々あります。これを調整するのがハーフNDフィルターで、上半分がサングラスで下半分は素通しガラスのようなフィルターです。

フィルターの位置を上下したり傾けたりすることで、さまざまな風景の明暗差を調整できます。ただし、レンズの前に大きな枠を付ける必要があるため使い勝手はよくありません。

これを電子的に実現したのが、OM-1 Mark IIのライブGNDです。フィルターの濃さと境目(グラデーション)の幅をそれぞれ3段階から選ぶことができて、その効果を撮影前にファインダーで確認できます。効果を生で確認できるので“ライブ”、そしてGNDの“G”はグラデーションの略です。

この機能がなくても、Adobe PhotoshopやLightroomといったレタッチソフトで後から調整することもある程度は可能です。しかし、撮影時に効果を確認しながら撮れるならその方が助かります。レタッチの手間も減らせます。

また、たとえば雲が白く飛んでトーン(階調)がなくなっていると、いくらレタッチしても雲の立体感を再現することはできません。ライブGNDを使うと、こうした問題も解決できます。

ライブGNDは電子的なハーフNDフィルターなので、C-PLなど物理的なフィルターと併用することも可能です。

理由6:手持ちで5000万画素、三脚で8000万画素に!

マイクロフォーサーズの撮像センサーは17.4mm×13.0mmで、35mm判フルサイズの半分です。面積は4分の1になります。有効画素数は約2037画素、最大記録サイズは5184×3888です。

この画素数は、現在のデジタル一眼カメラでは標準的なものだと思います。フルサイズ機や中判カメラだと、もっと画素数が多いものがありますが、そうなると装備が大型化します。

ただ、山を含めた風景写真では、できるだけ高解像度で撮りたいと思うこともあります。WebサイトやSNSで公開するだけなら有効2000万画素でも大き過ぎますが、大きく印刷することがあるなら解像度が高いに越したことはありません。

そこで活用したいのが、OM-1 Mark IIに搭載されているハイレゾショットの機能です。1度に複数枚の写真を撮って、それをカメラ内で合成して解像度の高い写真を生成してくれます。

三脚を使うと最大10368×7776の約8000万画素、手持ちでも8160×6120で約5000万画素の写真を撮ることができます。

こうした機能を使っても、生成された写真の画質が悪かったら意味がありません。以下の2枚を見てください。ライブGNDの作例1枚目と同じ構図で撮影したハイレゾショット(三脚)を100%表示にして1200×900ピクセルで切り抜きました。

OM-1 Mark II
原寸表示した富士山の山頂部を1200×900ピクセルで切り抜いた。雪面や空はノイズ(細かなドット)が出やすいが、ほぼ問題ない
OM-1 Mark II
画面左側の山と街並みを1200×900ピクセルで切り抜いた。ディテールの描写力がよく分かる

原寸で見ると、さすがにシャープさに欠けますが目立ったノイズがなく画質は十分に納得できるレベルだと思います。作例なのでレタッチは一切していません。撮ったままの写真を切り抜いただけです。

この機能を手に入れてから、ここ一番の雄大な風景は通常の解像度に加えてハイレゾショットでも撮るようになりました。

マイナス面を考慮しても自分史上最高の山カメラ

OM SYSTEMの新製品、OM-1 Mark II+M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO IIが山用のカメラとして優れていると思う理由を書いてきました。個人的な見解ですし、すべてのカメラを試しているわけではないので異論もあるかと思います。

撮影スポットまで車で行けるなら、私もフルサイズ機を使ってみたいという気持ちがないわけではありません。しかし最初に書いたように、山では写真の前に登山ありです。

山で高性能なカメラを使いたい。でも、なるべく荷物を増やしたくない。雨や、明暗差が大きなシーンにも対応できる機能がほしい。そういった要求に応えてくれるのが、今回選んだカメラとレンズの組み合わせということです。

最後に、ネガティブポイントも紹介します。

まず、他社のハイエンドカメラおよびプロ仕様の標準ズームレンズと比べると小型軽量ですが、コンデジや入門機に比べると、やはり少々ズッシリ感があります。

マイクロフォーサーズは撮像センサーが小さいのでダイナミックレンジが狭いという人もいますが、これは気にしたことがありません。コンデジやスマホの方がはるかに小さいので。

ただ、デジタル写真で以前から心がけているのは基本的に少し露出アンダーで撮ること(理由3の白根三山を参照)。暗い写真はフォトレタッチで明度や彩度を上げることがきますが、白トビには対処できないからです。

もうひとつ、OM SYSTEMのカメラはバッテリー1個で撮影できる枚数が少なめだと思います。OM-5は標準撮影可能枚数が310枚で、1日もたないことがありました。

OM-1 Mark IIは500枚ですが、その分、バッテリーが大きくなりました。また、これでも数日間の縦走登山には対応できないので予備は必須です。特に、ハイレゾショットなど撮影後にカメラ内で合成する機能を使うと消耗が早くなります。

こうしたマイナス点を考慮しても充分に満足しています。長く使いたいよき相棒ができました。

なお、以上のように12-40mm F2.8 PRO IIだけで幅広い撮影に対応できるのですが、私はOM-5に付けていた8-25mm F4.0 PROと60mm F2.8 Macroを所有しているので、今は3本のレンズを持ち歩いています。また、G7 X Mark IIもサブ機として使っています。

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下島 朗(読者レポーター)

下島 朗(読者レポーター)

“絶景ハンター”と称して、写真を撮りながら山を歩く中高年登山者。好きが高じて自己サイト『絶景360』を開設し、撮り溜めた絶景写真を公開している。

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