鞍掛山のきつい登りの先に待つ絶景。甲斐駒ヶ岳の展望台へ

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読者レポーターより連休の登山レポをお届けします。小白直樹さんは、甲斐駒ヶ岳(かいこまがたけ)の大展望を見に鞍掛山(くらかけやま)へ。

文・写真=小白直樹


北杜市白州町の辺りから甲斐駒ヶ岳を見上げると、黒戸尾根の隣の日向八丁(ひなたはっちょう)尾根からちょっとはみ出すように乗馬の鞍のような台形の山が目に入る。そこが今回めざす鞍掛山だ。鞍掛山は知る人ぞ知る甲斐駒ヶ岳の展望台。長い登りをがんばったご褒美の眺めが待っている。

GWの2日目、予報通りの青空の下、朝6時に日向山(ひなたやま)登山口の矢立石(やたていし)を出発した。日向山は手軽に大展望が望める人気の山だけあって、10台ほどの駐車スペースはちょうど我々の車で満車となった。

雑木の山腹をジグザグに高度を上げていくと、芽吹いたばかりの明るい緑が目に優しいカラマツの尾根道になる。この辺りは急登はなく、ウォーミングアップにちょうどいい。三角点を右手に見ると間もなく白砂の日向山山頂に到着した。

ここはまさに天空のビーチと呼ぶにふさわしい明るく開けた景色が広がっている。なかでも釜無川の谷間を挟んで対峙する八ヶ岳の眺めがすばらしい。権現岳(ごんげんだけ)と、奥には主峰・赤岳(あかだけ)の頭がのぞいている。

日向山の山頂に広がる天空のビーチ
日向山の山頂に広がる天空のビーチ

めざす鞍掛山へは西の砂地の急坂を下る。右手にはまだ風化していない「ミニ燕岳」とでも呼びたくなるような花崗岩の奇岩が、砂の斜面から突き出している。

燕岳を思い出させる様々な形の花崗岩
燕岳を思い出させるさまざまな形の花崗岩

コルから樹林帯に入るといくつか小ピークが続き、これらをアップダウンしたり巻いたりして越えるが、迷い道の踏み跡も付いているので要注意箇所だ。

日向山から鞍掛山へ。小ピークを縫うように進む
小ピークを縫うように進む

針葉樹の深い樹林の中の急坂がしばらく続く。体力的にはここが今回の核心部だ。ただ、踏み跡は明瞭なので迷うような箇所はない。1時間ほどがんばると次第に傾斜が緩んでホッとひと息つけるようになる。足元には可憐なバイカオウレンが咲いて和ませてくれた。

足元に咲くバイカオウレン
足元に咲くバイカオウレン

時折、左手には木の間に鳳凰三山(ほうおうさんざん)の姿が望める。天を突くように尖った地蔵のオベリスクが印象的だ。

木の間に望む鳳凰三山
木の間に望む鳳凰三山

10時過ぎに鞍掛山への分岐点となる駒岩に到着。ここには道標が立っていてわかりやすい。左手へ急坂を下ってコルからやや右へ回り込むように急な斜面を登り返す。登りの途中の足場が悪い箇所には短い鎖が設置されていた。

鎖場のトラバースは慎重に
鎖場のトラバースは慎重に

樹林に囲まれた鞍掛山山頂から展望台へは更に南東へ10分ほど踏み跡をたどる。前方に明るい空間が見えてきて樹林が切れると、舞台の幕が開くように眺めが広がった。11時、今回の目的地の鞍掛山展望台に到着。目の前にどどーんと鎮座する甲斐駒ヶ岳は、左手に黒戸尾根、右手に日向八丁尾根、中央には切り立った岩壁を持つ坊主中尾根が張り出し、ほかの場所からはなかなか見られない重量感のある山姿だ。

鞍掛山・雄大な展望に笑顔がこぼれる
鞍掛山・雄大な展望に笑顔がこぼれる
雄大な展望に笑顔がこぼれる

日向八丁尾根の奥に名前の通りギザギザの岩稜を連ねる鋸岳(のこぎりだけ)もかっこいい。お昼を食べながら、ゆっくり雄大な眺めを堪能した。

甲斐駒とは対照的な鋸の稜線
甲斐駒とは対照的な鋸の稜線

下山は満足感に浸りながら往路をたどって再び日向山に戻る。今回の行程は累積標高差が1500m近くあったようで、さすがに最後の砂地の登り返しは足が重い。日向山で最後の展望を満喫してから、矢立石に下山した。

日向山で素敵な景色を目に焼き付ける
日向山で素敵な景色を目に焼き付ける

快晴の空の下で楽しい仲間とすてきな景色を堪能できて、大満足の一日になった。GWにも関わらず、この日鞍掛山を訪れた登山者はほかに数名ほど。静かな山旅が好きな人にもおすすめの山だ。(山行日程=2024年4月28日)

MAP&DATA

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コース

矢立石駐車場~日向山~鞍掛山~展望台・往復(参考コースタイム:7時間20分)

小白直樹(読者レポーター)

小白直樹(読者レポーター)

丹沢山地の麓、神奈川県相模原市緑区在住。自然と酒をこよなく愛する仲間たちと共に山歩きや釣りなどのアウトドア活動にいそしみ、日々アクティブな隠居生活を送る自由人です。

この記事に登場する山

山梨県 /

鞍掛山 標高 2,037m

南アルプスの主脈から外れ、ひっそりとそびえる山だが、甲斐駒信仰に結びつく、時代を経た石仏や祠が残る山だ。山頂からの展望はないが、山頂から南に下ったところに展望台があり、甲斐駒の迫力ある北東面の雄姿が目に飛び込んでくる。

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