関東以北最高峰の日光白根山で大展望と湖沼巡り

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読者レポーターより登山レポをお届けします。真鍋晋さんは日帰りで日光白根山(にっこうしらねさん)へ。

文・写真=真鍋 晋


「一緒に山に行きませんか!」

最近登山を始めたという友人から、山行の誘いがあった。登山経験の浅い友人のためにも、今回は比較的安全で、多彩な魅力が詰まった登山にしたいと考えた。そこで、まず思い浮かんだのが、日光白根山だった。最大の魅力は、山頂からの眺望だろう。関東以北で最も高い頂は、足のすくむような高度感と、視界をさえぎるもののない解放感を味わえる。周回コースにすれば、美しい針葉樹林や、幻想的な湖沼のほとりを散策できる。標高2578mとはいえ、ロープウェイを使えば2000m地点からのスタートとなる。初めて本格登山を楽しむには、まさにうってつけの山だ。

朝7時、駐車場に到着。冬季にはスキー場として利用される大きな駐車場で、満車となる心配はあまりない。運行を開始する7時30分にロープウェイに乗り込み、山頂駅で降りれば、溶岩ドームの山容が目の前に姿を現わした。

日光白根山・針葉樹林帯
針葉樹林帯

二荒山神社を過ぎ、鉄の扉を開くと、いよいよ登山開始である。序盤の山道は、ハイキングコースにもなっており、足場はとても安定している。しばらく進むと、苔むした、美しい針葉樹林に囲まれる。同じ樹林帯といっても、八ヶ岳とは趣が異なる。徐々に勾配がきつくなり、みんな登山の洗礼を浴びる。1時間半ほど登ったところで、ようやく森林限界を超え、一気に視界が広がる。

日光白根山・森林限界を越える
森林限界を越える

喜んだのもつかの間、次は火山特有の荒涼としたガレ場が続く。砂礫に足をとられ、とても歩きにくい。やっとガレ場が終わったかと思うと、最後は岩場が待っている。手足を使ってよじ登れば、ようやく山頂が近づく。ロープウェイがあるといっても、決して楽な行程ではない。

日光白根山・火山特有の砂礫
火山特有の砂礫

10時、山頂に到着。ぐるりと三六〇度、視界をさえぎるものはなく、解放感が抜群である。足元には五色沼(ごしきぬま)の美しい湖面が見える。すこし遠くに目をやると、中善寺湖(ちゅうぜんじこ)と男体山(なんたいさん)が並んでいる。その先には折り重なるように日光の山々が連なっている。この山の最大の魅力は、なんといってもこの眺望であろう。道標の近くはやや混み合うため、小さな谷を越えた反対側の山頂へと向かう。ここには開けたスペースがあり、バックパックを置いて小休止をとる。持参したお菓子と飲み物を広げ、しばし絶景を堪能する。みんなどうやら、登山のすばらしさを満喫しているようだ。

日光白根山・山頂
日光白根山山頂
日光白根山・男体山と中禅寺湖
男体山と中禅寺湖

後半は2つの湖畔を巡る周回ルートとなる。山頂から峰伝いに稜線を歩き、来た道とは反対の斜面を降りる。ここの下りは少し急で、足元には注意が必要だった。30分ほどで平地となり、ほどなく青い湖面が姿を現わす。五色沼の湖畔は静寂で、神秘的な雰囲気に包まれている。

日光白根山・五色沼
五色沼

この静けさの原因はなんだろう?と思いを巡らす。周りには日光白根山、前白根山、五色山、座禅山があり、高い山々に囲まれた窪地になっている。湖には水流がない。川の出入りはなく、閉塞湖である。そしてなにより、美しい青の湖面が幻想的な雰囲気を醸し出している。湖畔には開けたスペースがあり、ここでゆっくりとランチを楽しんだ。

日光白根山・弥陀ヶ池
弥陀ヶ池

ここから弥陀ヶ池をめざす道のりは、登りが続く。弥陀ヶ池もよく似た雰囲気であるが、色彩は五色沼ほど青くはなく、大きさもやや小さい。このあたりは登山道の分岐が多く、道を間違わないよう注意が必要だ。湖面の木道の方向には進まず、坂道を登って樹林帯に戻る。途中からは、来た道に合流し、ロープウェイ山頂駅に戻った。山頂駅には、軽食レストランや足湯施設もあり、疲れをいやすこともできる。今回はロープウェイで山麓駅まで戻り、こちらの入浴施設で汗を流すことにした。一日体を動かした後は、温泉とサウナで疲れを癒すことができる。ここはまさに、さまざまな登山の魅力を満喫できる場所である。

(山行日程=2024年6月16日)

MAP&DATA

ヤマタイムで周辺の地図を見る

コース

山頂駅~日光白根山~五色沼~弥陀ヶ池~山頂駅(参考コースタイム:5時間)

真鍋 晋(読者レポーター)

真鍋 晋(読者レポーター)

普段は現役外科医、週末は登山・トレラン・ジョギング。じっと座っていることが、苦手な性分です。

この記事に登場する山

群馬県 栃木県 / 那須・日光

白根山 標高 2,578m

 栃木県と群馬県との県境にそびえる、日光火山群に属する溶岩円頂丘(石英安山岩)である。  日光火山群のなかで唯一噴火の記録のある火山で、最後の活動は1889年といわれているが、現在は活動を停止している。  西側にある菅(すげ)沼、丸(まる)沼は白根火山の溶岩流によって堰止められたものである。  全国各地に白根山という名の山があるが、それぞれの地方の名前を冠して呼ばれている。  この山も日光白根山、奥白根山などと呼ばれ、座禅山(ざぜんやま)、五色山、前白根(まえしらね)山などの2300mを超す山々に取り囲まれ、その内側にはコバルトブルーの水をたたえる五色沼、弥陀ガ池などの美しい湖沼や凹地があり、高山植物の宝庫でもある。  夏から秋のシーズンはいつ訪ねてもたくさんの花に会える山の1つである。シラネの名を持つ植物も多く、特に有名なシラネアオイは、古くは江戸時代の天保年間に発行された『日光山志』の中にも記され、弥陀ガ池周辺の群落は実に見事だったが、シカの食害などにより激減し、昔の面影はない。  白根山は山麓から見えにくいことなども手伝って、男体山や女峰山をはじめとする表日光連山の山々に比べると、かなりなじみの薄い山である。  しかし、周辺の高山から望むとき、関東以北の最高峰として、日光連山の盟主にふさわしい威厳と重厚さを兼ね備えた山容を誇る。白根山頂はさながら周りを絶壁や空堀で守られた古代の城塞を思わせる。二等三角点のある山頂からの展望はさえぎるものがなく、男体山をはじめ日光の山々、尾瀬、会津、上越の山々、皇海(すかい)山、遠く富士山など360度の大パノラマである。  また、この山は男体山(二荒山)の奥ノ院ともいわれ、大巳貴命が祭られ、峰修行の夏峰のコースでもあった。  深田久弥の『日本百名山』によれば、白根山の表口は上野(こうづけ)側であろうといわれており、地図上にも不動尊、六地蔵、大日如来、賽ノ磧などの信仰登山に由来する地名が残されている。しかし、現在はこのコースをたどる人は少なく、群馬側からの登山は菅沼を起点とするものがほとんどで、弥陀ガ池を経由して山頂まで3時間。  日光側からは、難コースではあるが、湯元温泉から外山尾根、前白根経由がこの山の最も魅力的なコースで、冬山登山にも利用され、山頂まで4時間30分。湯元温泉から中曽根、五色山、弥陀ガ池経由も同じくらいの時間を要する。また金精山(こんせいざん)、五色山経由のコースもあり、いくつかのコースを往路、復路で組合せてみるのも楽しいプランと思われる。

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