富士山ってどんなところ? 初めて登る人が知っておくべき5つのこと

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富士山とはどんな山なのか、その山頂はどんなところなのか。初めての富士登山の前に知っておきたい基礎知識。

文=山と溪谷オンライン、写真=PIXTA

目次

日本一の山・富士山

ご存じの通り、富士山は日本一高い山だ。標高は3776mで、南アルプスにある日本第2位の北岳(きただけ、3193m)や北アルプスにある第3位の奥穂高岳(おくほたかだけ、3190m)などを大きく引き離して、ひときわ高くそびえている。登山の経験が豊富な人はともかく、富士山で初めて登山に挑戦する人のなかには、疲労や高山病などで体調を崩し、登頂を断念するケースも多い。ここでは、富士登山を成功させるために、知っておきたい基礎知識を紹介しよう。

①富士登山は「夏限定」。登山シーズンは7月上旬〜9月上旬

富士山

標高が高い富士山は、冬の時期が長く、登山は夏限定のお楽しみ。シーズンは山の雪が解けて登山道が歩けるようになる7月に始まる。2024年は4つある登山ルートのうち、山梨県側の吉田(よしだ)ルートが7月1日(月)に開山、静岡県側の須走(すばしり)ルート、御殿場(ごてんば)ルート、富士宮(ふじのみや)ルートは7月10日(水)に開山し、9月10日(火)を最後に閉山される(残雪や登山道の安全状況で変動あり)。閉山後の富士山は下界より一足早く冬を迎える。登山のエキスパートでなければ登れない厳しい世界だ。

②「空気は薄い」。高山病にご用心

富士山

富士山の山頂は空気が薄く、酸素は平地の2/3程度。普通の人なら、ちょっと動くだけでも動悸や息切れを感じるだろう。この富士山ならではの空気の薄さが、高山病の原因となる。高山病は富士登山の失敗の原因としては最も多いものの一つなので、しっかり対策をとろう。

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③「驚くほど寒い」。明け方は真冬並みの冷え込み

富士山

標高が高くなると、気温は低くなる。富士山の山頂は、真夏でも最高気温が9℃ほど。最低気温は4℃ほどで、ときには明け方の冷え込みが氷点下になることすらある。登山口の五合目と山頂を比べても、昼間で9℃、夜間は13℃以上の気温差がある。雨や風があるときは体感温度はさらに下がる。登山の際は温かいウェアや手袋、帽子などの防寒アイテムを準備しよう。

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④「山頂は遠い」。最短ルートでも10時間歩く

富士山

さすが日本一の山だけあって、富士山頂は遠い。4つあるルートのうち、最短距離で登れる富士宮ルートでも、五合目(2400m)から最高地点の剣ヶ峰まで往復10時間、約10kmの道のりだ。標高差は約1500m、東京スカイツリー(634m)の2倍以上に達する。確実に登頂したいなら、無理して日帰りせず、1泊2日で登るスケジュールで挑戦するほうがいい。

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⑤「ラッシュアワーはすさまじい」。オフピーク登山で快適に

富士山

オーバーユースが問題になっている富士山。山頂に向かう人が行列を作る様子を映像などで見た人も多いだろう。実際、週末の未明などは、御来光を見ようと山頂をめざす登山者が集中するため、登山中に見たのは前の人のバックパックばかり、というくらいの大行列のなかで歩くことになってしまう。しかし、混雑する日・時間・ルートを避けると、静かな富士山の本来の姿に触れながら、マイペースで登ることができる。山小屋の予約も、比較的とりやすい日がある。

登山者が最も多いルートは吉田ルート。次いで富士宮ルート、須走ルート、御殿場ルートの順となっている。富士登山オフィシャルサイトには混雑を回避するための情報が豊富に掲載されているので、日程を決める前に見ておこう。

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この記事に登場する山

山梨県 静岡県 / 富士山とその周辺

富士山・剣ヶ峰 標高 3,776m

 日本の山岳中、群を抜いた高さを誇る富士山は、典型的なコニーデ式火山。いずれの方向から眺めても円錐形の均整のとれた姿は美しく、年間を通して人々の目を楽しませてくれる。東海道本線や新幹線の車窓から見ると、右手に宝永山、左手には荒々しい剣ガ峰大沢が望め、初めて見る人の心を奪う。  昔は白装束姿で富士宮の浅間(せんげん)神社から、3日も4日もかけて歩き通したという話を古老から聞いたことがある。現在では、富士宮と御殿場を富士山スカイラインが結び、途中からさらに標高2400m辺りまで支線が延びているので、労せずして雲上の人になれる手近な山となった。  日本で一番高い山、美しい山であれば、一生に一度は登ってみたい願望は誰にでもある。7月、8月の2カ月間が富士登山の時期に当たり、7月1日をお山開き、8月31日を山じまいと呼ぶ。  山小屋や石室が営業を始めると、日本各地や外国の人々も3776mの山頂を目指して集まってくる。特に学校が夏休みに入り、梅雨が明けたころから8月の旧盆までは、老若男女が連日押し寄せ、お山は満員となり、登山道は渋滞し、山小屋からは人があふれる。  富士宮口から登ろうとする場合は東海道新幹線の新富士駅、三島駅などからの登山バスで五合目まで行き、自分の足で山頂へ向けて歩きだすことになる。山梨県側には吉田口があり、東京方面からの登山者が多い。  目の前にそびえる富士山はすぐそこに見えるため、山の未経験者は始めからスピードを出しすぎ、7合目か8合目付近でたいていバテてしまう。登り一辺倒の富士山は始めから最後まで、ゆっくり過ぎるほどのペースで歩くことがコツである。新6合から宝永火口へ行く巻き道が御中道コースで、標高2300mから2500mを上下しながら富士山の中腹を1周することができたが、剣ガ峰大沢の崩壊で通行不能になっている。  山慣れたパーティならば新6合から左に入り、赤ペンキや踏み跡を拾いながら、いくつもの沢を渡り3時間もかければ大沢まで行くことができる。辺りは樹林帯で、シャクナゲの群落やクルマユリやシオガマなどの高山植物が咲く。  9合目右側の深い沢に残る万年雪は、山麓からも見ることができる。富士宮口を登りつめると正面に浅間神社奥ノ院がある。隣は郵便局。もうひとふんばりすると、最高地点の剣ヶ峰。山頂にはかつては毎日データを送り続けていた気象観測所跡が残っている。天候に恵まれたならば噴火口の周囲を歩く御鉢巡りが楽しめる。

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