富士登山の成否はプランニングにあり! 成功する登山計画

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登山をあまりしたことがない人は、どうやってプランを作ればいいのかわからないこともあるはず。なにを調べてなにを決めればいいか、解説しよう。

文=山と溪谷オンライン、写真=PIXTA

目次

いつ登る?登山の日取りを決めよう

富士登山のシーズンは7月上旬から9月上旬まで。2カ月ほどの期間のうち、まずはいつ登るかを決めよう。7月上旬の開山直後は登山道に残雪がある。7月下旬以降の週末と、お盆休みごろにかけては富士登山のハイシーズンで、かなりの混雑が予想される。富士登山オフィシャルサイトにある「混雑を回避する」に混雑日と混雑する時間帯、ルートによる混み具合の違いが紹介されているので、参考にするといい。

富士登山のプランニング
7月上旬の富士山頂。この時期はまだ残雪が多い(写真=Y・Tさんの登山記録より)

日帰り?泊まり?体力と経験に応じて決めよう

日帰りで登る人もいるが、どのルートで登っても、日帰りはかなりのハードスケジュールになる。確実に登頂したいなら、山小屋泊1泊2日で計画するのがおすすめだ。

1日目、スタート地点の五合目に到着したら、ゆっくり1〜2時間かけて高度に体を慣らしてからスタート。標高が上がると高山病のリスクが高くなるので、初めての富士登山なら、八合目くらいまでの山小屋で宿泊するといい。

2日目は頂上で御来光を見るために深夜に山小屋を出発するのが富士登山の定番スタイルだが、週末は大混雑となる。頂上での御来光にこだわるなら、平日がおすすめだ。そして、御来光は山頂でなくても充分楽しめる。週末に登るなら、あせらず山小屋の周辺で御来光を拝んでから登山を開始するといい。無理せず、確実に頂上をめざそう。登頂後、体力に余裕があったら日本最高地点の剣ヶ峰に登り、お鉢巡りに挑戦するといい。山頂の火口をぐるりと囲む8つのピークを巡る周回コースは、大パノラマを楽しみながら歩ける。

下山は午前中のうちに開始すると安心。バスの時刻を気にしたりして、下山を急ぐと転倒などの事故につながりやすい。下山開始が午後遅くならないよう注意しよう。

登山の経験があり、一定の体力があるなら日帰りで登ることもできるが、高山病予防のため、五合目の山小屋に一泊するプランがおすすめだ。なお、トラブルが多い夜行日帰りの弾丸登山は自粛が呼びかけられており、山小屋の予約がないと16時以降は入山できないので注意しよう。

富士登山のプランニング
山頂での御来光をめざして夜の吉田ルートを登る(写真=ラヴィ08さんの登山記録より)

どのルートから登るか決めよう

富士山には、山梨県側の吉田ルート、静岡県側の須走ルート、御殿場ルート、富士宮ルートの計4つの登山ルートがある。吉田ルートは東京からアクセスしやすく、一番登山者が多い。砂走りの下山が楽しい須走ルート。行程は長いが、比較的すいている御殿場ルート。最短距離で登れる富士宮ルートなど、それぞれ特色がある。コースの魅力やアクセスのしやすさを調べて、登るルートを選ぼう。

自分で行く?ツアーにする?

事前に山のことを調べて、山小屋や交通を手配し、自分の力で登ると、達成感はひとしおだ。しかし、はじめての富士登山にはツアーを利用するという手もある。内容はプランによってさまざまだが、充実したツアーだと交通や宿泊はもちろん、登山ガイドが同行し、装備のレンタルなども含まれているものもある。こうしたツアーは引率のガイドが登山中のフォローをしてくれるので、登山に不安がある人にはおすすめだ。一方で、交通と宿泊だけがパッケージされたシンプルなプランの場合はリーズナブルなぶん、登山自体は自力で行なうことになる。

山小屋を予約しよう

富士山の山小屋は完全予約制。電話予約のほかインターネット予約に対応する山小屋も増えている。日程を決めたら、できるだけ早く山小屋を予約しよう。

ただし、短いシーズンに登山者が集中するので、予約をとるのに苦労することも多い。もし空きがない場合は、ツアーを探してみる方法もある。旅行会社が山小屋の予約枠を押さえてからツアー参加者を募集するケースが多いので、山小屋が予約できない場合でも、同じ日程のツアーは申し込める場合もある。

なお、夜間の弾丸登山を規制するため、各ルートの五合目を午後遅くスタートする場合は、係員に予約証明を求められる。予約したことがわかるものをスマホのキャプチャ画像などで用意しておこう。

富士登山のプランニング

行動予定をまとめよう

大まかな日程が決まったら、行動予定を決めて当日のスケジュールをまとめよう。

下記の内容を書き出しておいて、同行する仲間と共有しよう。また、留守宅の家族や友人にシェアしておくと、万が一の事故などの際に状況を把握しやすくなる。

  • 参加者(氏名、住所、電話番号、年齢、連絡先の電話番号)
  • 日時
  • アクセス
  • 登るコース
  • 行動スケジュール
  • 宿泊先(連絡先も)
  • 持ち物リスト

アクセス手段、出発予定時刻や山小屋の到着見込み時刻、2日目の登山開始時刻や登頂予定などを書き出しておく。実際に山に行くときも持っていこう。登山計画書のひな形を活用してもよい。

富士登山のプランニング

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この記事に登場する山

山梨県 静岡県 / 富士山とその周辺

富士山・剣ヶ峰 標高 3,776m

 日本の山岳中、群を抜いた高さを誇る富士山は、典型的なコニーデ式火山。いずれの方向から眺めても円錐形の均整のとれた姿は美しく、年間を通して人々の目を楽しませてくれる。東海道本線や新幹線の車窓から見ると、右手に宝永山、左手には荒々しい剣ガ峰大沢が望め、初めて見る人の心を奪う。  昔は白装束姿で富士宮の浅間(せんげん)神社から、3日も4日もかけて歩き通したという話を古老から聞いたことがある。現在では、富士宮と御殿場を富士山スカイラインが結び、途中からさらに標高2400m辺りまで支線が延びているので、労せずして雲上の人になれる手近な山となった。  日本で一番高い山、美しい山であれば、一生に一度は登ってみたい願望は誰にでもある。7月、8月の2カ月間が富士登山の時期に当たり、7月1日をお山開き、8月31日を山じまいと呼ぶ。  山小屋や石室が営業を始めると、日本各地や外国の人々も3776mの山頂を目指して集まってくる。特に学校が夏休みに入り、梅雨が明けたころから8月の旧盆までは、老若男女が連日押し寄せ、お山は満員となり、登山道は渋滞し、山小屋からは人があふれる。  富士宮口から登ろうとする場合は東海道新幹線の新富士駅、三島駅などからの登山バスで五合目まで行き、自分の足で山頂へ向けて歩きだすことになる。山梨県側には吉田口があり、東京方面からの登山者が多い。  目の前にそびえる富士山はすぐそこに見えるため、山の未経験者は始めからスピードを出しすぎ、7合目か8合目付近でたいていバテてしまう。登り一辺倒の富士山は始めから最後まで、ゆっくり過ぎるほどのペースで歩くことがコツである。新6合から宝永火口へ行く巻き道が御中道コースで、標高2300mから2500mを上下しながら富士山の中腹を1周することができたが、剣ガ峰大沢の崩壊で通行不能になっている。  山慣れたパーティならば新6合から左に入り、赤ペンキや踏み跡を拾いながら、いくつもの沢を渡り3時間もかければ大沢まで行くことができる。辺りは樹林帯で、シャクナゲの群落やクルマユリやシオガマなどの高山植物が咲く。  9合目右側の深い沢に残る万年雪は、山麓からも見ることができる。富士宮口を登りつめると正面に浅間神社奥ノ院がある。隣は郵便局。もうひとふんばりすると、最高地点の剣ヶ峰。山頂にはかつては毎日データを送り続けていた気象観測所跡が残っている。天候に恵まれたならば噴火口の周囲を歩く御鉢巡りが楽しめる。

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