富士登山にはいくらかかる?

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富士登山にはどんな費用がどのくらいかかるのか。登山の予算について解説する。

文=山と溪谷オンライン、写真=PIXTA

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意外にお金がかかる富士登山

一度は登ってみたい富士登山。けれど、いったいいくらかかるのだろうか・・・。登山をしない人にとっては、見当もつかない富士登山の予算。どんなお金がいくらくらい必要なのか、シミュレーションしてみよう。

ウェアや道具、買うなら10万円、レンタルで2万円

登山やアウトドアを趣味にしていて、道具を一通り持っている人ならそれを使えばいいが、登山をしない人はウェアや道具を一そろい用意する必要がある。富士登山をきっかけに、登山を趣味にしようと考えている人は、その後の山登りでも長く使えるものを購入するといい。反対に、富士登山のほかに山登りはしないという人は、レンタル品で済ませてしまうのもアリだろう。

富士山に登る予算

必要なウェアや道具は別記事(富士登山、なにを着る?なにを持っていく?登山ガイドが教えます)に詳しいが、比較的リーズナブルで、以後の夏山登山(日帰り・山小屋泊)で使えるアイテムを一式購入すると、少なくとも100,000円程度になる。

レンタルの場合はセット商品が多く、借りられるアイテムの数と日数に応じて料金が変化する。ヘッドランプのような小物も含めたフルセットで1泊2日20,000円ほどが相場だ。

いちばん悩ましいのが、アウトドアが好きで、多少のアイテムは持っているというケース。バックパックとトレッキングシューズはあるけどレインウェアがない・・・といった場合だ。そんな人には「これをきっかけに購入して、本格的に登山を始めてみては?」と提案したい。アウトドアが好きなら、きっと山の魅力にハマるはずだから。

自宅から登山口までの交通費・・・12,180円(東京発・吉田ルート)から

東京駅を起点に、山梨県側の吉田ルートを登るプランで試算してみよう。東京駅からJRを利用し、中央線で新宿駅へ、そこで特急に乗り換えて大月へ。ここで富士急行線の特急に乗り換えて河口湖まで。鉄道運賃は合計4,310円(切符、片道)だ。河口湖駅から富士スバルライン五合目までのバスの運賃が片道1,780円。東京起点で往復すると、合計12,180円となる(往復割引を使わない場合)。

名古屋駅発で富士宮ルートを登る場合では、JR名古屋駅から三島駅まで東海道新幹線(ひかり・指定席)で片道8,440円(新大阪からこだま利用だと12,300円)。三島駅から富士宮口五合目までの富士登山バスの運賃が片道2,840円。往復で合計22,560円(新大阪からだと30,280円)となる。

登山前に支払う通行料と協力金・・・3,000円

吉田ルートでは今年から通行料が義務化された。通行料2,000円と、環境整備の協力金1,000円の合計3,000円を登山時に支払うことになる。なお、支払いはオンラインでの事前予約と同時に事前決済が可能なので、当日登山口で支払わなくても大丈夫。静岡県側の3つのルートでは通行料は不要だが、1,000円の協力金制度は共通だ。

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富士山に登る予算
吉田ルートの協力金受付所(写真=サンシマさんの登山記録より)

登山中のトイレ、飲み物、現金足りるかな・・・6,800円

富士山のトイレはチップ制。1回200〜300円だ。1日あたり3回ずつ利用するとして、最大1,800円。飲み物は500mlのペットボトルが500円程度。1日3本ずつ購入した場合、3,000円。いずれも現金払いが基本なので小銭を多めに持っていこう。なお、山小屋の売店などではお菓子やカップ麺、ビールなどの酒類なども販売している。輸送費の関係で標高が高くなるとともに価格が上がる傾向にあり、市価の2〜3倍程度。うどんや丼ものなどの食事メニューは街よりちょっと高めで1,000円前後だ。登山中に2回昼食をとると2,000円程度となる。

富士山に登る予算

山小屋は1泊2食付きが基本・・・10,000円〜

富士山はキャンプ禁止。宿泊は山小屋を利用することになる。平日と週末では宿泊料が異なる場合が多く、1泊2食付きで平日は10,000円〜13,000円前後、週末は13,000円〜15,000円前後の料金設定が多い。ほとんどの場合、宿泊時のトイレ利用は宿泊料に含まれている。

富士山に登る予算
富士山の山小屋の夕食といえばカレーが定番。水が貴重なので、食器は使い捨て(写真=turkeyさんの登山記録より)

必需品ではないけれど・・・富士山といえばあのアイテム!金剛杖1,000円、焼印200円〜

富士山といえば金剛杖(こんごうづえ)。八角形の長い棒状の長い杖で、軽い白木でできている。江戸時代に広まった講中登山の必需品だったが、機能性ではトレッキングポールに及ばないものの、富士登山の雰囲気を盛り上げるアイテムとして今なお愛される登山道具だ。金剛杖自体は五合目などの売店で1,000円程度で買える。実用品ではないが、富士登山後に飛行機に乗る人に向けて、コンパクトな「ミニ金剛杖」なるものもある。

富士山に登る予算

金剛杖を買ったら忘れてはいけないのが「焼印」だ。道中の各山小屋では、「八合目」「九合目」「頂上」などの地点名や山小屋名が入った焼印を金剛杖に押してくれる。料金は200〜300円ほど。富士登山のリピーターの中には、すべての焼印をコレクションしようと、焼印をびっしりと隙間なく押している猛者もいる。

結論。富士登山、東京発なら3万円〜

ウェアや道具などにかかる費用は別として、東京起点、1泊2日で富士山に登る場合に必要なお金はおよそ30,000円から、というのが試算の結果だ。しかし、時期や曜日によっても宿泊代は変動する上、ほかにもこまごまとした出費はあるはずなので、実際にはもう少し費用が必要になる。

世界最高峰エベレストに登るには600万円以上の費用が必要という。標高は違えど、日本一の山に登る費用としては、さほど高くないのではないだろうか。

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この記事に登場する山

山梨県 静岡県 / 富士山とその周辺

富士山・剣ヶ峰 標高 3,776m

 日本の山岳中、群を抜いた高さを誇る富士山は、典型的なコニーデ式火山。いずれの方向から眺めても円錐形の均整のとれた姿は美しく、年間を通して人々の目を楽しませてくれる。東海道本線や新幹線の車窓から見ると、右手に宝永山、左手には荒々しい剣ガ峰大沢が望め、初めて見る人の心を奪う。  昔は白装束姿で富士宮の浅間(せんげん)神社から、3日も4日もかけて歩き通したという話を古老から聞いたことがある。現在では、富士宮と御殿場を富士山スカイラインが結び、途中からさらに標高2400m辺りまで支線が延びているので、労せずして雲上の人になれる手近な山となった。  日本で一番高い山、美しい山であれば、一生に一度は登ってみたい願望は誰にでもある。7月、8月の2カ月間が富士登山の時期に当たり、7月1日をお山開き、8月31日を山じまいと呼ぶ。  山小屋や石室が営業を始めると、日本各地や外国の人々も3776mの山頂を目指して集まってくる。特に学校が夏休みに入り、梅雨が明けたころから8月の旧盆までは、老若男女が連日押し寄せ、お山は満員となり、登山道は渋滞し、山小屋からは人があふれる。  富士宮口から登ろうとする場合は東海道新幹線の新富士駅、三島駅などからの登山バスで五合目まで行き、自分の足で山頂へ向けて歩きだすことになる。山梨県側には吉田口があり、東京方面からの登山者が多い。  目の前にそびえる富士山はすぐそこに見えるため、山の未経験者は始めからスピードを出しすぎ、7合目か8合目付近でたいていバテてしまう。登り一辺倒の富士山は始めから最後まで、ゆっくり過ぎるほどのペースで歩くことがコツである。新6合から宝永火口へ行く巻き道が御中道コースで、標高2300mから2500mを上下しながら富士山の中腹を1周することができたが、剣ガ峰大沢の崩壊で通行不能になっている。  山慣れたパーティならば新6合から左に入り、赤ペンキや踏み跡を拾いながら、いくつもの沢を渡り3時間もかければ大沢まで行くことができる。辺りは樹林帯で、シャクナゲの群落やクルマユリやシオガマなどの高山植物が咲く。  9合目右側の深い沢に残る万年雪は、山麓からも見ることができる。富士宮口を登りつめると正面に浅間神社奥ノ院がある。隣は郵便局。もうひとふんばりすると、最高地点の剣ヶ峰。山頂にはかつては毎日データを送り続けていた気象観測所跡が残っている。天候に恵まれたならば噴火口の周囲を歩く御鉢巡りが楽しめる。

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